2018年10月19日

銀しゃり 山本一力

銀しゃり 銀しゃり[文庫] (小学館文庫)

山本一力さんの描写するご飯は、美味しそう過ぎて堪らない。
「だいこん」もそうだが、本作も柿鮨の魅力に参ってしまう。ストーリーも予定調和的ではあるが、ひねりもあって楽しめる。ただ単なる努力とか周囲との連携とかにとどまらず、江戸の風を感じさせてくれる描きっぷりが心地よい。旗本の家来とはいえ、その内情の苦しさや、江戸・魚河岸の状況など「そうだったんだ!」という部分もあり飽きない語り口も健在でしょう。若干、書き切れていない登場人物の情報もあるが、それはそれで想像して補うことで処理。ドラマ化とかして欲しい作品。
posted by 灯台守 at 05:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代物

2018年10月14日

アトリックス・ウルフの呪文書 パトリシア・A・マキリップ

アトリックス・ウルフの呪文書 (創元推理文庫) パトリシア・A・マキリップ (著)

マキリップの未読本、一掃シリーズ。
マキリップ好きなので、結構確保しているが、なかなか読めず。
一気に読みたいが、さて。

とある戦いに魔術師が介入したが、思わぬ結果で翻弄されるというお話。読者には結果が、ほぼ見えていてどうやってそこにたどり着くかの物語になっている。マキリップの作品によく登場する「森の女王」が本作品にも登場するが、その描写は表現できないほど素晴らしい。魔法や魔法使い達の描写はもちろん、騒然とした台所の情景がなんとも言えない。ラストの意外性は無いが物語の美しさを堪能する本といえる。
posted by 灯台守 at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2018年10月08日

とりつくしま  東直子

とりつくしま  東直子 (ちくま文庫)

とりつくしま係とは死後、この世に未練を残した方に、「なにかのモノに魂を宿らせる」という事をサポートしてくる役割。この本は、そのとりつくしま係に、サポートされ、死後に現世にモノとして帰ってきて残された人々を見て語る、短くて切なくて哀しくて、でも暖かなお話の連作。

ロージン
トリケラトプス
青いの
白檀
名前
ささやき
日記
マッサージ
くちびる
レンズ
番外篇 びわの樹の下の娘

読書会仲間から教えてもらった本。有難い。東直子さんは短歌の名手であるが、このような話も書かれているとはビックリ。才媛である。とりつくしま係とは死後、この世に未練を残した方に、「なにかのモノに魂を宿らせる」という事をサポートしてくる役割だそうで。そもそも、この発想が素晴らしい。そして憑りつくモノも、さまざまなら、動機もさまざま。そして、その想いも、なかなかである。短い中に凝縮した感情の奔流のようなものが感じられ、得難い一冊となった。
posted by 灯台守 at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2018年10月04日

魔術師ペンリック ロイス・マクマスター・ビジョルド

魔術師ペンリック (創元推理文庫)ロイス・マクマスター・ビジョルド (著), 鍛治 靖子 (翻訳)

五神教シリーズの最新刊。三本の中編。
・ペンリックと魔
・ペンリックと巫師
・ペンリックと狐

いつのまにかヒューゴー賞も受賞していたとは。今回の主人公は、ペンリックという名の若者。結構イケメンっぽい。いきなり取りついた「魔」との行動がお茶目で面白い。「チャリオンの影」とかの長編とは雰囲気が違って、別の世界を見せてくれる。ペンリックと「魔」のデズデモーナの掛け合いは、まるで夫婦漫才のようで引き込まれる。絶妙の3編。残りの未訳も邦訳されそうなので、期待して待とう。
posted by 灯台守 at 20:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2018年09月29日

その女アレックス ピエール・ルメートル

その女アレックス (文春文庫) ピエール・ルメートル
突然誘拐されたアレックス。誘拐したのは、前の彼氏の父親。どうも息子の行方を聞き出そうとしているらしい・・・ 檻に閉じ込められた彼女は奇抜な方法で脱出するが。
脱出した彼女は、なぜ警察に行かないのか謎が謎を呼び、警察は彼女を追う。そして驚愕のラストへ・・・

かなり評判になった一冊。かなり前に108円で購入していたが、読む機会がなかった。がついつい読み始めたら止まらない!! 誘拐されたアレックスが悲惨な状態に追い込まれ、そこから奇抜な手法で脱出する彼女だが・・・次々に展開する彼女を取り巻く状況、追跡する刑事たち、最終的に到達する結論を含めてミステリというよりも高度なサスペンスな一冊と言える。主役のアレックスに対する感情が一転二転三転する話だった。ただ、最後が気に入らない人もいるかもしれない。私は、かなり良いサスペンスと思った次第。
posted by 灯台守 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年09月26日

碧空のカノン:航空自衛隊航空中央音楽隊ノート 福田和代

碧空のカノン: 航空自衛隊航空中央音楽隊ノート (光文社文庫) 福田 和代

連作短編ミステリというか、ちょっと不思議な話。

ギルガメッシュ交響曲
ある愛のうた
文明開化の鐘
インビジブル・メッセージ
遠き山に日は落ちて−渡会俊彦の場合
ラッパ吹きの休日

以上の6編

福田和代さんは初。航空自衛隊所属の音楽隊でのちょっと不思議な謎のお話の連作ストーリー。自衛隊内の音楽隊の内容や音楽を志す若者の葛藤、ちょっとしたラブストーリーもあって、ラノベ的に楽々読める。主人公のカノン(佳音)の性格設定がなかなか面白い上、周りの人物もキャラクターが立っている。シリーズ化されていて今後も楽しめそう。
posted by 灯台守 at 19:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年09月16日

薔薇の名前 <上・下> ウンベルト・エーコ

薔薇の名前 <上・下> ウンベルト・エーコ 東京創元社

たぶん十数年ぶりの再読。ミステリのフリをした哲学書だと思って読むと良いかもしれない。「100分で名著」の解説が丁寧で合わせて読むとグングン進むのが不思議ではある。ページを開けば中世の修道院に誘われ、ワトソン役であるアソドの独白に幻惑される。見事に異世界の感覚を味わいながら読み進む。

ミステリのネタや犯人自体は意外性なしだが、やっぱりそれだけではないのがミステリの面白さ、小説の醍醐味なんだろう。次々に発生する殺人、怪しい修道士、その最中に唐突に登場する異端審問官、謎の書物の存在する何人であれ出入りを拒む秘密の部屋等々が物語の奥行きと雰囲気を作り出す。難読なのは変わらないが、束の間、中世のイタリアの山中を垣間見せてくれる筆力は半端ない。さすが、エーコの代表作だろう。
posted by 灯台守 at 18:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ