2019年01月30日

ひと 小野寺史宜

ひと 小野寺史宜 祥伝社
本屋大賞候補作 5冊目

まさに青春小説。買おうとしたコロッケを譲ったことから、その惣菜店にアルバイトとして雇われる彼は、父に続いて母を亡くしたばかりだった。そして、彼はひとりで生きていくことになる・・・

悪人は、あやしい遠い親戚のオッサンのみ。青葉の元カレは嫌な奴だが、悪人ではない。周りの人々のいいひと具合が割とリアル。特に大学の友人のリアルさが半端ない。特に剣って、ああいう人いるよねって感じ。

全編を通じて、「ひと」とのつながりを描く。「ああ、そういう繋がり、縁ってあるなぁ」と思ってしまう。結局、人は一人では生きていけない。そのことを改めて感じさせてくれる、そんな話だった。
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2019年01月29日

ある男 平野啓一郎

ある男 平野啓一郎 文藝春秋
本屋大賞候補作 4冊目

二歳の子をなくした彼女が再婚した夫が不慮の事故で亡くなった。しかし、その夫が名乗っていたのは、まったく別人だった。その背景を探る弁護士は、何を見たのか。人々が自分だと認識している事象は、過去の記憶にしかならないというやるせない主張が浮かび上がってくる。平野啓一郎さんが唱える「分人主義」の考えが、浮かんでは消えてゆく。家族のつながり、夫婦のつながりを改めて感じるが、一筋縄ではいかない想いがそこにはある気がする。

単純そうな描写に、平野さんの考えが投影されているように見える。再読すると、登場人物への想いが変わるかもしれないと思った。
posted by 灯台守 at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) |

2019年01月27日

さざなみのよる 木皿泉

さざなみのよる 木皿泉 河出書房新社

本屋大賞候補作 3冊目

木皿さん、二冊めのご本らしい。NHKドラマの前日譚から始まる。

ドラマでは小泉今日子さんが演じる小国ナスミの亡くなるところから夫・日出夫の後妻・愛子の子の光が60歳を超えるまで、さまざまな視点から「生と死」を鍵に短編でかたり次ぐ連作集。死を描く話は暗くなりがちだが、本作には妙な明るさがある。死を描くということは、その裏側である生を描くことにもなるという事を明確に指示している。ただでさえ、気に難いこの世間をどう生きていくか、ナスミは短い人生の中で残された人々、さらにその後の人たちにも語っているような気がする。

冒頭、ナスミが亡くなるシーンから始まり、姉妹や夫の話が続くが、ナスミの同級生や職場の同僚の話など、語り口と話の切り口が素晴らしい。特にダイヤモンドの話が秀逸。

大賞をとっても不思議ではない作品。現状、一押し。
posted by 灯台守 at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) |

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ 文藝春秋
本屋大賞、二冊目。

瀬尾さんの本には、悪人が出てこない。多少、根性が曲がっている風の人は登場するが、根本的には普通の善人の誤差の範囲だと思う。本作も、トリッキーな設定ではあるし、無理無理感が否めないが、やっぱり、その基本線は揺るがない。三度苗字が変わって、父親が三人、母親が二人いるという森宮優子さん17歳が主人公。その性格の良さは、不可解といえるだろう。しかし読み進めるにつれ、当たり前に感じている親子関係に疑問を読者は抱く。「私たちが親子・家族と思っている関係って何だろう?」と。それぞれの登場人物が、それぞれの立場で成長していく様が、淡々と描かれる。読む私たちも、一緒に成長しているだろうか。振り返って反省しきり。
posted by 灯台守 at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) |

2019年01月25日

熱帯 森見登美彦 

熱帯 森見登美彦  文藝春秋

今年の本屋大賞候補作、1作目。この本は候補作発表前に読了していた。

やっぱり森見節、全開。
没入できる語り口と謎の提示が好き。物語はこうでなくてはダメだという見本を提示してくれた。魅力的な話中話と、視点の移ろいが読者の想いを揺さぶってくれる。

作家の森見登美彦は、スランプの中、不思議な古書店で「熱帯」という本を買う。夢中になって読む彼だが、読みかけの本は枕元から消えていた。その本の話を知り合いに話すと、「沈黙読書会」なる会に誘われ、「熱帯」を知る人に遭遇する。その人も全部は読み切れずにいた・・・

謎の作家・佐山尚一、千夜一夜物語、不思議な古書屋台・「暴夜書房」、飴色のカードボックス、謎の集団「学団」・・・あなたはこの本、読了できるか。

本好きにはたまらない、一冊。
posted by 灯台守 at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) |

2019年01月23日

怒り・上下 ジグムント・ミウォシェフスキ

怒り (上・下) ジグムント・ミウォシェフスキ 小学館

ポーランドの作家さんらしい。「ポーランドのルメートル」と呼ばれているらしいが、似ているのは素材だけだと思う。

なかなか謎の設定。死後、数十年に見える白骨死体。しかし一二週間しか経過していないことが判明。謎を追う検察官を描く。ミステリーというよりクライム小説といった方が正しいかも。

欠損なく残っている骨だったが、生前の彼にはなかった指の骨まで補填されていた・・・
DV被害者とその加害者の不可思議な事件、娘との確執等が絡み、結末へなだれ込む。 一級のクライム小説ではあるが、結末は不満足な感じ。
posted by 灯台守 at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年12月16日

梟の城 司馬遼太郎

梟の城 司馬遼太郎 新潮文庫

今年の菜の花忌課題図書。とりあえず選択したのは新潮文庫だが、かなり活字が小さい。目で追いきれない時がたびたび登場することに困惑した。

信長に滅ぼされた伊賀の忍者として生き残った精鋭の二人、風間五平と蔦籠重蔵。二人は運命に導かれ秀吉を巡る陰謀と攻防を戦う。さながら二振りの刃のようだ。彼らを取り巻く二人のくの一、木さると小萩とのかかわりを描きつつ、男と女の本質、伊賀と甲賀の忍者の生き様を司馬遼太郎の感性を持って現代に伝えてくれる。こういう忍者小説もあってよいと思わせる一冊。

メインの二人の戦いは少なく、周辺で登場する戦いが見事に描かれ、引き付ける。また、男女のかかわりを司馬遼太郎的に切り取るさまも面白いといえる。

最後に、秀吉を討つことが出来るか・・・という点に限れば歴史上の事実もあって揺るがしがたいが、そこはやっぱり最後には想定外の落ちが待っている。さすが司馬さん。脱帽である。
posted by 灯台守 at 19:03| Comment(0) | TrackBack(0) |