2018年03月05日

グラスホッパー 伊坂幸太郎

グラスホッパー 伊坂幸太郎 角川文庫

本屋大賞の候補作であるAX(アックス)は殺し屋が登場するシリーズで、グラスホッパーが第一作。なので、まずはこちらの感想から。

「鈴木」は、妻を交通事故で亡くした時から、その加害者をどうしても許せず、とある会社に潜入する。その加害者が、その会社のオーナーの息子であり、隙あれば・・・と思っていた。そして、鈴木は会社の上司の女性から「彼をどうにかしようと思ているでしょ」と言われ、責められる。その時、窓から見える交差点で、そのオーナーの息子が何者かに押され車に跳ねられる。同時にその様子を別のところから見ていた「鯨」という殺し屋がいた。その「鯨」を、ひょんなことから追う羽目になったナイフ使いの「蝉」を加えた三つ巴で「押し屋」を探すことになる・・・

なかなか個性豊かな殺し屋が登場する。自殺に追い込む「鯨」、ナイフを使いこなす「蝉」。双方とも、かなり個性的である。さらに押し屋と思われる男「槿」(ムクゲだがなぜか”あさがお”と名乗る)が、さらに個性的である。一方、「鈴木」は全く平凡で心もとない一般人である。この個性的な殺し屋たちと鈴木が交錯しながらストーリーが進む。押し屋だと思われる「槿」の家の場所を巡って行きつ戻りつの大乱戦が繰り広げられる。序盤は緩やかに進むが徐々に加速され終盤は一気に畳みかける展開である。

さすが伏線のキング、伊坂さんの面目躍如、この作品も「ああ、あれかぁ」と納得の話が続き最後まで飽きさせない。エンターテイメントの証である。
posted by 灯台守 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年02月25日

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人 実業之日本社
本屋大賞候補作8作目。知念さんの本は初。

広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。
外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を
通わせていく。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く――。
いたたまれず、病院に駆け付けた碓井は・・・

ユカリに付きまとう影、奇妙な遺言、不可思議な状況の裏にある事実とは。

甘い恋愛描写があって、気恥ずかしくなるが、そこが大きなトリックかもしれない。うかうかしていると知念さんのトリックにはまってしまう。最後の数十ページを読んでいると、「してやったり」の作者の顔が浮かぶようだ。

エンターテイメントは、こうあるべきという見本の一冊。
posted by 灯台守 at 12:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

盤上の向日葵 柚月 裕子

盤上の向日葵 柚月 裕子 中央公論新社
本屋大賞候補作 7冊目。残り少なくなってさみしい感じがたまらない。

埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。不可解なことに、一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。高額な将棋の駒を、なぜ一緒に埋めたのか・・。プロになれず、奨励会を去った佐野巡査と、県警捜査一課のベテラン刑事、石破は、手掛かりを求めて、駒の持ち主を探るが・・・

典型的な警察小説。現在の刑事二人の捜査状況ともう一人の主人公の「過去からの遍歴」を語りながら、主人公と二人の刑事の対面までのお話。将棋を知らなくても面白いが、知っているとさらに面白い。佐野巡査の苦悩もわかるし、石破の個性もあざやか。また、一方の主人公の人生もまた凄い。一気に引き込まれてしまう。

藤井聡太六段登場で活況を呈している将棋界だが、その裏側の「真剣師」を上手い取り上げ方で物語を作り上げている。真剣師といえば鬼団六氏が有名だが、こういう迫り方もあるかもしれない。幕切れがなんとも切なく哀しい。
posted by 灯台守 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年02月22日

月刊キャッツ 2月 2/22 1F K5

月刊キャッツ 22回め 左サイドのA席。でも握手席で、今回は3匹の猫と握手。
おまけに猫の日で、アフタートークイベントの日でもありました。

キャッツ 大阪
2018年2月22日(昼)公演  大阪四季劇場

グリザベラ 江畑晶慧
ジェリーロラム=グリドルボーン 岡村美南
ジェニエニドッツ 加藤あゆ美
ランペルティーザ 馬場美根子
ディミータ 松山育恵
ボンバルリーナ 相原 萌
シラバブ 藤原加奈子
タントミール 高倉恵美
ジェミマ 加島 茜
ヴィクトリア 杉野早季
カッサンドラ 山田祐里子
オールドデュトロノミー 飯田洋輔
アスパラガス=グロールタイガー/
バストファージョーンズ 正木棟馬
マンカストラップ 加藤 迪
ラム・タム・タガー 田邊真也
ミストフェリーズ 一色龍次郎
マンゴジェリー 斎藤洋一郎
スキンブルシャンクス 北村 優
コリコパット 横井 漱
ランパスキャット 高橋伊久磨
カーバケッティ 河津修一
ギルバート 新庄真一
マキャヴィティ 川野 翔
タンブルブルータス 塚下兼吾
posted by 灯台守 at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | あれこれ

2018年02月20日

星の子 今村夏子

星の子 今村夏子・著 朝日新聞出版
本屋大賞候補作、6冊目で芥川賞候補作で第39回 野間文芸新人賞受賞作。

主人公・林ちひろは中学3年生。生まれた直後、いわゆる病弱だった彼女をどうにかしようと両親は、さまざまな事を試す。その中で、父の職場の同僚から「水」もらう。その水は効果てきめんだったことから、両親は怪しい宗教にのめりこんでいく。一方、両親から距離をとる姉。流されるちひろは、徐々に違和感を感じるが・・・

いわゆる新興宗教を背景に描くお話だが、ありがちな陰惨で不気味な感じはまったくしない。両親の強制感もさほど感じられず異質な感じもあまりしない。ただ、ちひろの周囲にいる人々が見え隠れしつつ彼女を支えていることが解る。結局のところ、彼女は両親の元を旅立つような暗示はあるが、でも完全に見放すようなことはしないだろうとも思えるエンディングである。姉はどうなったか、叔父さんの意図はどこにあるのか、書かれていない部分はあるが、癒され感が半端ないことは確か。

好きな人は好きだろうと思える一冊
posted by 灯台守 at 05:58| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年02月04日

騙し絵の牙 塩田 武士

騙し絵の牙 塩田 武士 KADOKAWA

本屋大賞候補作、5冊目。昨年は「罪の声」で大いに話題になった塩田さんの作品。大泉洋さんとのコラボ作品らしい。

速水は大手出版社に勤める編集者であり雑誌「トリニティ」の編集長である。出版界の苦境は例外なく彼担当のトリニティの売り上げにも現れていた。早期の黒字化を図らなければ廃刊になるとの危機感がある。その中で、同じ社の文芸月刊誌が廃刊になった・・・。非情な出版業界で戦う者たちを追う一冊。

まさに大泉洋とのコラボ作品。活字を追うごとに脳内では大泉洋主演の映画的に描写されていく。この作品が当たれば、映画化の時に彼以外の主役はいないとおもうくらいはまっている。(当たり前か)ストーリーも面白い。出版界の裏を知っている人も、知らない人も楽しめること請け合いである。(実態はこれより・・・以下自粛)

さらに、エピローグ以降も楽しませてくれる。一冊で三度おいしい「騙し絵の牙」。その意味は最後まで読むとわかります。
posted by 灯台守 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) |

DESTINY 鎌倉ものがたり

「DESTINY 鎌倉ものがたり」は、西岸良平・原作の映画、これまた同じ原作の「三丁目の夕日」の監督である 山崎貴さんが監督。堺雅人、高畑充希が主役を務める。

舞台は鎌倉。鎌倉に住むミステリ作家・一色正和とアルバイトが縁で結婚した中村亜紀子は、いきなり家の前を駆け抜ける河童に遭遇するが、「鎌倉じゃ当たり前」という夫の言葉に唖然とする。そんな異界との接点である鎌倉にて、妖怪や魔物、果ては貧乏神とも遭遇する。そんな中、亜紀子は妖怪に転ばされ零体のみとなってしまい、体をなくしてしまう。そして黄泉の国へ行く羽目になる。その彼女を救いに正和は助けに行こうとするのだが・・・

奥さん奪還作戦のアクション映画と思いきや、それは最後の30程度。クライマックスではあるが、その前のちょっと変わった鎌倉の生活描写の方が10倍面白い。その中に描かれたなんとも言えないゆったりした時間の流れが鎌倉なのかもしれない。しかも各エピソードに出てくる役者さんの芸達者なこと。飲み屋の女将である薬師丸ひろ子や、御年142才?というお手伝いさんのキンさんを演ずる中村玉緒をはじめとする配役が見事。その数々のエピソードも重要な意味を持ちちゃんと回収されるのはお見事だった。

映画館で見る必要はないかもしれないが、DVDで見る分にはオススメになると思う一作。
posted by 灯台守 at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画