2017年02月11日

獣の奏者 再読

上橋菜穂子さんの獣の奏者を読書会用に再読中。このブログにも一度登場済。

http://l-h-keeper.sblo.jp/article/60351927.html
http://l-h-keeper.sblo.jp/article/60374883.html

前回が二度目の再読で、五年も前なんだと再認識した。3回めかかと思い出す。改めて読み返すと、新たな発見は多い。特に、この作品はエンディングが強烈過ぎて、全部持って行かれる感じである。しかし、つらいファンタジー。まあ、外伝があることが救いである。

ハードカバー5冊に及ぶ長い話だが、登場する人々が、なんて生き生きとしていることか。特に食事シーンや食べ物の記述は、ホントに楽しい。結果はわかっているけど、それを凌駕する物語の力を感じる。

ファンタジーは魔法の物語ではなく、人の物語であると再認識させてくれるお話だろう。
posted by 灯台守 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2017年02月07日

福家警部補の挨拶 大倉崇裕

福家警部補の挨拶 大倉崇裕 創元推理文庫

ミステリー読書会の課題本が、「福家警部補の再訪」ということで購入したが、実はシリーズの2作目とのことでビックリ。まずは第一作目から読むのが礼儀作法だろうと思って、購入したのが、本作品。

刑事コロンボばりの倒叙モノの傑作シリーズ。ちょっと見は若い事務職のOLのように見える福家警部補。150cmちょいの身長だが、徹夜明けもまったく感じさせないバイタリティと鋭く深い洞察力で犯人に迫るのは、素晴らしい。この本には4つのお話が収録されている。

最後の一冊
オッカムの剃刀
愛情のシナリオ
月の雫

以上の4編。倒叙モノは犯人はわかっていながら、話が進むミステリである。完璧と思える犯人の知恵がどこから崩れるのか、読者への挑戦はあざやかで、少し哀しい。名編の福家警部補シリーズは、そんな倒叙モノの傑作といえよう。
posted by 灯台守 at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2017年02月04日

夜行 森見登美彦

夜行 森見登美彦 小学館
本屋大賞候補作 6作目。他の読書会との関係もあって、一時休憩。

本作は、森見さんの新作で直木賞候補でもあった。
鞍馬の火祭りを見に行く5人。10年前も6人で鞍馬に火祭りに行き、一人がそれっきり帰ってこなかった。そして10年後、集まった5人は不思議な話を始める・・・それは、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵に絡む話だった。

ファンタジーというか、怪談というか、得体のしれないお話ではある。森見さんの京都シリーズとは、ちょっと雰囲気が違い怪しさ漂うが、それはそれでいて森見ワールドにはなっていると思う。その世界の正体が、徐々にわかってくるというより最終話で「そうか・・・」と思わせる手法は読み手をさらに異世界へ連れ去るようだ。

読後感が良いとはいえないが、長く余韻が続く話といえる。「夜にも奇妙な物語」的なお話が続くが、その謎の本質は語られること無くクローズしていく。これも森見さんの成せる技かもしれない。
posted by 灯台守 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年02月01日

桜風堂ものがたり 村山早紀

桜風堂ものがたり 村山早紀 PHP研究所
本屋大賞候補作五作目です

月原一整は、大学時代からのアルバイトから始めた本屋を愛する書店員である。ある日、書店員としての仕事中に、万引きの少年を追いかけ結果的に事故に合わせてしまう。ネット上で批判された月原は、勤務先の書店に迷惑を賭けないように身を引く。そんな彼が唯一気になったのは、一冊の文庫本のこと。彼が売れると信じたその本を売れなかったことだった・・・

書店員が選ぶ売りたい本の大賞である本屋大賞の候補作にふさわしい一冊。
主人公の月原、勤務先だった書店店員、そして彼が勤めることになる小さな街の本屋である桜風堂書店オーナーのおじいさんと孫、その周辺の人達、誰をとっても良い人のお話である。もともと作者は童話作家であるしファンタジックな作風の方である。だからあんまり悪人は出てこない。みんないい人なのだ。そんなストーリー中で語られるのは本の魅力である。

大きな事件は万引きの事件程度。他にはあんまり起伏のない展開では有る。とりたててドキドキすることもない。ちょっと特殊な人が多いような気もする。しかし描かれる風景は優しく、ちょっとした描写がなぜか懐かしい。特に本屋の描写はそこに本屋があるかのように思えてくるのが嬉しい。つい最近まで駅前や商店街や街の中心部にあった「ちょっとした本屋さん」がそこにある。

便利になってネット検索で、クリック一つで、購入することになれてしまった人々。そんな私たちに「こういうのも良いよ」といっているような、そんな本だった。
posted by 灯台守 at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) |

コーヒーが冷めないうちに 川口俊和

コーヒーが冷めないうちに 川口俊和 サンマーク出版
本屋大賞候補作、四冊目です。

ある都市伝説が語る喫茶店。その喫茶店ではある条件で過去に戻れるという。ただし、過去は変わらないし、動けば元に戻る。その店に来たことの無い人には会えない。そして特定の席に座る必要があるが、そこには必ず先客がいる・・・ その条件をクリアした四人の話。

設定の勝利と言える話だろう。過去に戻る設定が素晴らしい。しかも先客の扱いも上手い。ただ、4つのお話のうち1つは映画化されたお話のキモと同じだし、リサーチ不足の話もある。まあ、その分を差し引いても話としては上手いストーリーテラーとも言える。優しく読めるのでこの手の話を読み慣れていない方にはオススメ。
posted by 灯台守 at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年01月29日

i(アイ)  西加奈子

i(アイ)  西加奈子 ポプラ社
本屋大賞候補作シリーズ、三冊目になります。

「この世界にアイは存在しません」その一言は、アイが数学の授業で聞いた話。アイはシリア生まれでアメリカ人と日本人の夫婦の養子となった。もちろん彼女が養父母を選択したわけではない。裕福な両親の間で彼女は自分の幸せを後ろめたく感じる。「私は生かされている。死んでいった人達の犠牲の上で」 彼女はひたすら死者の数をノートに記録し数え始める。果たして自分は何のために生きるのか。

9.11テロ、東日本大震災をただの事件ととらえず、アイの目を通してその本質を語ってくる。シリアからの養子というだけで、センセーショナルな上にアメリカ人と日本人の両親というところも微妙だろう。

その上、親友のミナの存在が物語に大きな課題を投げかける。ジェンダーの問題や家という問題もある。不妊という問題も含めて課題が投げられている。幸せとはなにか、改めて考えさせられるが、果たしていろいろな問題が解決したかどうか、一読をお願いしたい。
posted by 灯台守 at 14:08| Comment(0) | TrackBack(0) |

2017年01月25日

暗幕のゲルニカ 原田マハ

暗幕のゲルニカ 原田マハ 新潮社
本屋大賞候補作、二作目。
2001年9月11日 ユーヨーク近代美術館MoMAのキュレーター 瑤子は、通勤で地下鉄の出口から地上に出た瞬間、驚愕した。そこにはニューヨークの高層ビルが崩壊する様が展開していた。そして、それは最愛の夫、イーサンとの別れの情景となる・・・ その日から、彼女はピカソのゲルニカをニューヨークへ「奪還」する戦いを始めることになった・・・

かの名作、「楽園のカンヴァス」で見たことのある人も登場する本作は、原田マハさんのキュレーター経験をフルに活かした作品だろう。第二次世界大戦前夜のパリから始まり、パリ解放直後のピカソとゲルニカ作成過程を写真撮影したアダの話、現代の瑤子の話を交互に語りつつお話はクライマックスへなだれ込む。

ピカソはゲルニカに何を描いたのか、その願いはなんだったのか、現実と虚構を巧みに混ぜつつ私達の前にゲルニカを描き出す物語に胸打たれた。この分野では原田マハさんの右に出るものはない。独壇場だろう。
posted by 灯台守 at 20:51| Comment(0) | TrackBack(0) |