2018年06月10日

恐怖の兜 ヴィクトル・ペレーヴィン

恐怖の兜 ヴィクトル・ペレーヴィン 角川書店 新・世界の神話

珍しいチャット形式の本。チャット形式なら「電車男」を思い浮かべるが、全く違うアプローチ。
いっそ、横書きの左へめくる方式の方がよかったかもしれない。

気が付いたらPCが設置された個室にいた8人の男女。掲示板のチャットルームで自分たちの情報交換をしつつ、謎を探る。何故ここにいるのか、何処にいるのか。どうもミノタウロスの迷宮を模していると気が付いた彼らは限られた情報の中から謎を解き明かしていくが。

ロシアの小説なのに、登城人物はハンドルネームだけなので、名前が変化せず、一個しかないので苦労せず読み進めるが、いやいや読みやすさに騙されてはいけない。読み飛ばした部分多し。

最後は、「そういう解決か」と思ったが、まあ有りかも。しかしテシウスは誰か、何故個々に集まった(集めらえた)かは明かされず・・・謎が残るが、自分で考えろということか。
posted by 灯台守 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2018年05月29日

図書館島 ソフィア・サマター

図書館島 ソフィア・サマター 東京創元社

原題は「A Stranger in Olondria」オロンドリアの異邦人となるのだろうか。
主人公・ジェヴィックは、香辛料の島で生まれ、香辛料を商う裕福な父と第二夫人である母とくらす。ある時、父親は「幽霊の国=オロンドリア帝国」から一人の家庭教師を連れ帰る。その家庭教師から彼は言葉と文字と本を学ぶ。父亡き後、一家を背負う彼は、帝国への旅に出る。長い、不思議な、言葉と宗教と友情と政略の旅へと向かう・・・

図書館島という邦題の通り、本と言葉の物語ともいえる。語り口が独特の雰囲気を作り出し、ファンタジーには欠かすことの出来ない世界観が見事に構築されている。タニス・リーやジョナサン・キャロルのダーク・ファンタジーとは違う世界が楽しめる一冊。
posted by 灯台守 at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2017年08月29日

ウォーターシップダウンのウサギたち リチャード・アダムス

ウォーターシップダウンのウサギたち リチャード・アダムス 評論社 神宮輝夫・訳

読書会で新訳を読んだので備忘録として。

ヘイズルは生後1年の野ウサギ。弟ウダギのファイバーは、時々未来を語ることがあるが、その彼が今の群れの危機を予言する。そして、弟の言葉を信じた、彼は少数の牡ウサギと脱出を図る。見事、危機を脱した彼らは幾多の危機を乗り越え、新たな村を作るが・・・

ウサギの生態を踏まえ、見事な描写で語られるお話は見事な冒険ファンタジーとなる。牝のいない群れのためにヘイズルは将軍が率いる村から牝ウサギを奪取するが、もうドキドキの連続である。そして最後の戦いなど、あっという解決方法で読者を欺く。

しかし、なんと雄大で懐かしい風景の連続であることか。出版されて50年を迎えようとするこのファンタジーは、いまだに色褪せず、イギリスの風景とフサギ達を見せてくれる名作である。
posted by 灯台守 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2017年08月06日

バベル九朔 万城目学

バベル九朔 万城目学 KADOKAWA/角川書店

祖父が遺し花親が引き継いだ古くてしがないテナントビル「バベル九朔」。主人公はその管理人をしながら小説家を目指していた。ある日、テナントビルに泥棒が入る。警察はとある写真を彼に見せるが、それは当日ビルに現れた黒ずくめの女だった。再度、ビルに現れ彼を問い詰める「扉はどこにある?」と。

五階建てのテナントビルを舞台に妄想と異世界と論理の崩壊が混濁するファンタジーといえる。今までのわかりやすい万城目ファンタジーとは違い、根底に流れる世界観/哲学を受け入れられるかどうかがカギ。一転二転する世界構築の背景を追っていける人は幸いなり・・・

私は、可もなく不可もなく。万城目さんへの期待は、もう少し高いかな?
よって、若干評価低め。
posted by 灯台守 at 18:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2017年07月23日

かがみの孤城 辻村深月

かがみの孤城 辻村深月 ポプラ社

学校に行けなくなった、安西こころ。あるとき彼女は鏡の中から呼ばれ、同じ中学生とともに「鏡の城」の「願いの部屋」の「願いのカギ」を探すことになる。集められた7人は、なぜ集められたのか、願いのカギとは、そして「オオカミさま」とは・・・ 様々な感情、想いが交錯し、一年の月日が流れる・・・
果たして彼・彼女たちはどうなるのだろうか。

たぶん特異な形のファンタジー作品。しっかりと現代世界に結び付けられていながら、向こう側の孤城との話も尽きない。ファンタジーでありながら、派手な魔法もバトルもない。しかし、物語が進行するにつれて7人の背景や事実が表れてくるに従って謎は謎を呼ぶ。ミステリー的な話をベースにしつつ、人間関係をさりげなく描きながら、大団円に持っていく描き方は辻村さんの真骨頂だろう。

やっぱり最後の数ページで、辻村節が満開となる。やっぱり上手いの一言につきます。
posted by 灯台守 at 18:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー