2015年07月26日

ゴールデンスランバーの魅力

ゴールデンスランバーの魅力

読書レポートは下記。
ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 新潮文庫 2015/6/22

「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎・著 新潮文庫は 2008年本屋大賞受賞、第21回山本周五郎賞受賞作品であり、『このミステリーがすごい!』2009年版では1位となった。その魅力は、いろいろあげられるが、大きく絞ると下記の3点になると思う。

1.奇想天外な発想と設定
2.映画で言うフラッシュバック的手法。
3.巧妙な伏線

まずは、その設定である。現役総理が暗殺されるという事件を扱いながら、その犯人は捕まらないという意外性は捨てがたい。さらに、主人公は、その犯人の濡れ衣を着せられたサエない元宅配ドライバーである。このミスNo.1になったとはいえ、ひたすら逃走劇を描くという異色作でもある。作中に「ケネディとオズワルド」の事例を上げ、オズワルド冤罪説と絡めつつ、権力機構の怖さ、一般市民の無関心さ、マスコミの無責任さを描いていく。でもなぜかほんわかする癒しのエピソードもあるという所が伊坂節でもある。

さらに工夫されているのが、その構成である。冒頭は暗殺前の周辺描写であり、いきなり20年後に飛ぶ。読者はここで事件の概要とその後の状況を知った上で、事件後の逃走劇を追走することになる。そして、最後に事件から三ヶ月後となる。あらためて、事件後と三ヶ月後を読了た後、20年後を読むとさらに事件の全貌が浮き上がってくる。

そして、なにより秀逸なのが伏線の張り方である。小ネタから根幹まで縦横無尽に張られた伏線は絶妙のタイミングで刈り取られていく。伊坂さんの伏線は定評があるが本作でもその特徴は生かされている。伏線は回収よりも張るときのほうが難しい。伏線と気がつかないことが重要なのだ。伊坂さんは絶妙な張り方をする。さらにその内容は、伏線と思わせない何気ないものなのだ。

今回、読書会のために再読したが本作の魅力を再認識した次第である。
posted by 灯台守 at 06:35| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2015年07月09日

開かせていただき光栄です 皆川博子

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―  皆川博子 ハヤカワ文庫

記録モレを書いておきます。

18世紀のロンドン。犯罪捜査する警察も科学捜査も未熟だったころのお話。解剖学教室を運営する外科医ダニエル先生の教室に運び込まれた遺体。墓泥棒から購入した妊娠六ヶ月のそれは準男爵の娘だった。突然の保安判事部下査察に対し遺体を隠した。しかし隠したはずの遺体は若い妊婦から四肢が切り取られた少年になっていた。その上、顔を潰された男の遺体まで出現する・・・

なんとも魅力的な謎の設定から始まり、詩人志望の少年の回想シーンをはさみつつ物語は進む。遺体の消失などは普通のトリックであり、ミステリ読みなら驚くものでもないが、その物語性、キャラクタの設定はさすがのストーリーテラーである。特に解剖医のダニエル先生とその弟子たちのユニークさ、盲目の判事であるジョン・フィールディングと姪のアンの探偵ぶりは楽しませてくれる。

ミステリと古き良き(?)ロンドン好きなら一読をオススメする。御年80歳を迎える皆川博子さんの素晴らしさに乾杯である。
posted by 灯台守 at 05:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2015年06月22日

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 新潮文庫
2008年本屋大賞受賞作品。候補作の常連でありながら、なかなか大賞に届かなかった伊坂作品だが、この年にこの作品で受賞しました。
山本周五郎賞も受賞しているスリリング・エンターテイメントの傑作と言えるでしょう。

青柳雅春は、困惑していた。仙台にやってきた若き首相が暗殺され、その犯人が自分だと報道されている。直前にあった学生時代の友人、森田は「逃げろ」と言っていた・・・。
事件の直前の描写から始まり、事件の視聴者を描いた後、いきなり二十年後になる。つまり読者は、ほぼ事件の結果を知っているのだが肝心な犯人の全貌は分からない。その状態で事件本編へなだれ込む。

いきなり事件へ雪崩れ込むかとおもいきや、周りを固められてじわじわと周囲を狭められてから・・・というストーリー展開に唖然とする。さらに、身の覚えが無い濡れ衣を振りほどきながら逃げる主人公を描く手法は斬新であるし、その上、かれの学生時代と現代を交互に描きつつ、最後にさまざまなエピソードが収斂していく描写は素晴らしい。

小さな描写が重要な伏線になって繋がっていくのは、伊坂さんの得意とする所だが、それに説得力とリアリティを付加していく。なんとも言えないエンディングがぐっと来る豪華な一冊である。
posted by 灯台守 at 05:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2015年06月02日

シンメトリー 誉田哲也

シンメトリー 誉田哲也 光文社文庫
ご存知、姫川玲子シリーズ第三弾。
初の短篇集である。

東京
過ぎた正義
右では殴らない
シンメトリー
左だけ見た場合
悪しき実
手紙

以上7編。姫川玲子の視点から描いた短編と、他の視点から見た短編の2種類あるが共通点は「罪とは何か」という点だろう。はっきり主張が分かるのは「右では殴らない」だろうか。他にも短い話の中に玲子の刑事としての矜持が見て取れる。

長編とは一線を画す短篇集。ストロベリーシリーズの魅力を示すものかもしれない。
posted by 灯台守 at 05:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2015年05月18日

クラブ・ポワブリエール 森福都

クラブ・ポワブリエール 森福都 徳間文庫
森福さんのラブ・ミステリとあって、期待したけど、ちょっと肌に合わなかった。

夫が帰宅すると、妻はいなかった。あわてて出ていった様子が伺えてパソコンは電源が入ってソフトは立ち上がったままだった。何処に行ったか分からない妻と、不思議な5つのメールに添付されたお話・・・
いったい何故妻は出て行ったのか。何処にいるのか。夫は、その5つの話を読み始めた。

謎は面白いが、解決案は今ひとつだった。あまりにも人間臭いというか・・・。ちょっとハズされた感じ。残念。
posted by 灯台守 at 19:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ