2018年03月06日

AX 伊坂幸太郎

AX 伊坂幸太郎 KADOKAWA
本屋大賞候補作9作目。「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く「殺し屋シリーズ」三作目。

「兜」と呼ばれる殺し屋。通常は妻と高校生の息子のいる3人家族の、若干というかかなりの恐妻家である。彼は殺し屋家業から足を洗いたいのだが、なかなか許されない。そんな中で、依頼をなんとかこなしていくお話。

ただ、さすがに伊坂作品であり、一筋縄ではいかない。このAX単行本化のための書下ろしがカギである。内容を書くと、「即、ネタバレ」になるので書きたいが書けない。

思うと「グラスホッパー」「マリアビートル」「AX」の三作までが前振りになっている。AX最後の作品は、その要素を踏まえた上での締めの作品として、読者にサプライズをくれる。
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2018年03月05日

グラスホッパー 伊坂幸太郎

グラスホッパー 伊坂幸太郎 角川文庫

本屋大賞の候補作であるAX(アックス)は殺し屋が登場するシリーズで、グラスホッパーが第一作。なので、まずはこちらの感想から。

「鈴木」は、妻を交通事故で亡くした時から、その加害者をどうしても許せず、とある会社に潜入する。その加害者が、その会社のオーナーの息子であり、隙あれば・・・と思っていた。そして、鈴木は会社の上司の女性から「彼をどうにかしようと思ているでしょ」と言われ、責められる。その時、窓から見える交差点で、そのオーナーの息子が何者かに押され車に跳ねられる。同時にその様子を別のところから見ていた「鯨」という殺し屋がいた。その「鯨」を、ひょんなことから追う羽目になったナイフ使いの「蝉」を加えた三つ巴で「押し屋」を探すことになる・・・

なかなか個性豊かな殺し屋が登場する。自殺に追い込む「鯨」、ナイフを使いこなす「蝉」。双方とも、かなり個性的である。さらに押し屋と思われる男「槿」(ムクゲだがなぜか”あさがお”と名乗る)が、さらに個性的である。一方、「鈴木」は全く平凡で心もとない一般人である。この個性的な殺し屋たちと鈴木が交錯しながらストーリーが進む。押し屋だと思われる「槿」の家の場所を巡って行きつ戻りつの大乱戦が繰り広げられる。序盤は緩やかに進むが徐々に加速され終盤は一気に畳みかける展開である。

さすが伏線のキング、伊坂さんの面目躍如、この作品も「ああ、あれかぁ」と納得の話が続き最後まで飽きさせない。エンターテイメントの証である。
posted by 灯台守 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年02月25日

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人 実業之日本社
本屋大賞候補作8作目。知念さんの本は初。

広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。
外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を
通わせていく。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く――。
いたたまれず、病院に駆け付けた碓井は・・・

ユカリに付きまとう影、奇妙な遺言、不可思議な状況の裏にある事実とは。

甘い恋愛描写があって、気恥ずかしくなるが、そこが大きなトリックかもしれない。うかうかしていると知念さんのトリックにはまってしまう。最後の数十ページを読んでいると、「してやったり」の作者の顔が浮かぶようだ。

エンターテイメントは、こうあるべきという見本の一冊。
posted by 灯台守 at 12:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

盤上の向日葵 柚月 裕子

盤上の向日葵 柚月 裕子 中央公論新社
本屋大賞候補作 7冊目。残り少なくなってさみしい感じがたまらない。

埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。不可解なことに、一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。高額な将棋の駒を、なぜ一緒に埋めたのか・・。プロになれず、奨励会を去った佐野巡査と、県警捜査一課のベテラン刑事、石破は、手掛かりを求めて、駒の持ち主を探るが・・・

典型的な警察小説。現在の刑事二人の捜査状況ともう一人の主人公の「過去からの遍歴」を語りながら、主人公と二人の刑事の対面までのお話。将棋を知らなくても面白いが、知っているとさらに面白い。佐野巡査の苦悩もわかるし、石破の個性もあざやか。また、一方の主人公の人生もまた凄い。一気に引き込まれてしまう。

藤井聡太六段登場で活況を呈している将棋界だが、その裏側の「真剣師」を上手い取り上げ方で物語を作り上げている。真剣師といえば鬼団六氏が有名だが、こういう迫り方もあるかもしれない。幕切れがなんとも切なく哀しい。
posted by 灯台守 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2018年02月02日

屍人荘の殺人 今村昌弘

本屋大賞候補作、候補作の中では3冊目。(2冊は既読)

屍人荘の殺人 今村昌弘 東京創元社
第27回鮎川哲也賞受賞作。選評はなかなか素晴らしい。実績もこれまた素晴らしい。
『このミステリーがすごい!2018年版』第1位
『週刊文春』ミステリーベスト第1位
『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねる。そこは、想像を絶する体験の場所だった・・・

「クローズド・サークル」つまり「吹雪の山荘」と驚愕の密室&奇想天外の殺人方法が登場する作品。出だしの学園ミステリサークルの雰囲気に惑わされてはいけない。そこから怒涛の攻めが始まる。たぶん、これまでこんな作品を作ろうと思ったミステリ作家はいなかったということははっきりしている。

今までのミステリファンの方がビックリ度は高いと思うが、満足度ははて?

posted by 灯台守 at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ