2019年01月27日

さざなみのよる 木皿泉

さざなみのよる 木皿泉 河出書房新社

本屋大賞候補作 3冊目

木皿さん、二冊めのご本らしい。NHKドラマの前日譚から始まる。

ドラマでは小泉今日子さんが演じる小国ナスミの亡くなるところから夫・日出夫の後妻・愛子の子の光が60歳を超えるまで、さまざまな視点から「生と死」を鍵に短編でかたり次ぐ連作集。死を描く話は暗くなりがちだが、本作には妙な明るさがある。死を描くということは、その裏側である生を描くことにもなるという事を明確に指示している。ただでさえ、気に難いこの世間をどう生きていくか、ナスミは短い人生の中で残された人々、さらにその後の人たちにも語っているような気がする。

冒頭、ナスミが亡くなるシーンから始まり、姉妹や夫の話が続くが、ナスミの同級生や職場の同僚の話など、語り口と話の切り口が素晴らしい。特にダイヤモンドの話が秀逸。

大賞をとっても不思議ではない作品。現状、一押し。
posted by 灯台守 at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) |

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ

そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ 文藝春秋
本屋大賞、二冊目。

瀬尾さんの本には、悪人が出てこない。多少、根性が曲がっている風の人は登場するが、根本的には普通の善人の誤差の範囲だと思う。本作も、トリッキーな設定ではあるし、無理無理感が否めないが、やっぱり、その基本線は揺るがない。三度苗字が変わって、父親が三人、母親が二人いるという森宮優子さん17歳が主人公。その性格の良さは、不可解といえるだろう。しかし読み進めるにつれ、当たり前に感じている親子関係に疑問を読者は抱く。「私たちが親子・家族と思っている関係って何だろう?」と。それぞれの登場人物が、それぞれの立場で成長していく様が、淡々と描かれる。読む私たちも、一緒に成長しているだろうか。振り返って反省しきり。
posted by 灯台守 at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) |

2019年01月25日

熱帯 森見登美彦 

熱帯 森見登美彦  文藝春秋

今年の本屋大賞候補作、1作目。この本は候補作発表前に読了していた。

やっぱり森見節、全開。
没入できる語り口と謎の提示が好き。物語はこうでなくてはダメだという見本を提示してくれた。魅力的な話中話と、視点の移ろいが読者の想いを揺さぶってくれる。

作家の森見登美彦は、スランプの中、不思議な古書店で「熱帯」という本を買う。夢中になって読む彼だが、読みかけの本は枕元から消えていた。その本の話を知り合いに話すと、「沈黙読書会」なる会に誘われ、「熱帯」を知る人に遭遇する。その人も全部は読み切れずにいた・・・

謎の作家・佐山尚一、千夜一夜物語、不思議な古書屋台・「暴夜書房」、飴色のカードボックス、謎の集団「学団」・・・あなたはこの本、読了できるか。

本好きにはたまらない、一冊。
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2018年12月16日

梟の城 司馬遼太郎

梟の城 司馬遼太郎 新潮文庫

今年の菜の花忌課題図書。とりあえず選択したのは新潮文庫だが、かなり活字が小さい。目で追いきれない時がたびたび登場することに困惑した。

信長に滅ぼされた伊賀の忍者として生き残った精鋭の二人、風間五平と蔦籠重蔵。二人は運命に導かれ秀吉を巡る陰謀と攻防を戦う。さながら二振りの刃のようだ。彼らを取り巻く二人のくの一、木さると小萩とのかかわりを描きつつ、男と女の本質、伊賀と甲賀の忍者の生き様を司馬遼太郎の感性を持って現代に伝えてくれる。こういう忍者小説もあってよいと思わせる一冊。

メインの二人の戦いは少なく、周辺で登場する戦いが見事に描かれ、引き付ける。また、男女のかかわりを司馬遼太郎的に切り取るさまも面白いといえる。

最後に、秀吉を討つことが出来るか・・・という点に限れば歴史上の事実もあって揺るがしがたいが、そこはやっぱり最後には想定外の落ちが待っている。さすが司馬さん。脱帽である。
posted by 灯台守 at 19:03| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年08月29日

冬の夜ひとりの旅人が イタロ・カルヴィーノ

冬の夜ひとりの旅人が (白水Uブックス) イタロ・カルヴィーノ

えらいケッタイな構成と内容の本。初めてイタロ・カルヴィーノ の本を読んだが、脳みそが揺さぶられる感覚を得た。

冒頭、イタロ・カルヴィーノの本を購入し「冬の夜ひとりの旅人が」を読み始めたら、32ページ前後で乱丁を見つける。購入した書店に行くと同じ状況の本を持参した女性に巡り合う・・結局、読者の男性が次々と中途半端な本を読み続ける状況を語る話になるが、途中の「話中話」が、なかなか興味深い話なのだ。でも、いいところで終わるのだ。なお、最後の締めも意味深で良いと思う。今までの小説に飽きた方にはオススメ
posted by 灯台守 at 19:06| Comment(0) | TrackBack(0) |