2018年04月26日

犬は勘定に入れません ―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 コニー・ウィリス

犬は勘定に入れません ―あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎 コニー・ウィリス 早川書房

思いっきり安かったので、文庫ではなく単行本で購入した。もちろんAmazon中古本ですが、状態も良く、帯付きでお買い得感があった。

タイムマシンが発明された21世紀。オックスフォードの史学科の学生、ネッド・ヘンリーは1888年へ行きコヴェントリー大聖堂にある主教の鳥株(ビショップズ・スタンプ)と呼ばれるヴィクトリア朝の花瓶を調べることになる。しかし、過去から持ち込めないはずの猫の謎や、到達した地点でのドタバタ騒ぎで、時空の矛盾を発生させないための奮闘が始まる・・・。

第二次世界大戦中の空襲から始まったかと思うと、ヴィクトリア朝のテームズ川のボート旅に話は移って、ヴィクトリア朝時代の中産階級の生活描写が続く。あちこちにユーモアたっぷりな描写が続き、コミカルでウィットにとんだ文章はページをめくる手も進む。しかし、ネッドは寝不足に襲われ、歴史上の矛盾点は解消しようとすればするほど、話は複雑になっていく。

最大の焦点は、ミステリファンなら、まずは推測が付くかな・・・という感じ。でも、その周辺に貼られた伏線は見事としか言いようが無い。最終100ページの展開はもう止まらない。あっと思うところに伏線が張ってあり、単純な話と思っていた裏側には想像していないモノがあって素晴らしい。

タイムトラベルものの定番と思いきや、思った以上のバリエーションに発展するストーリーは、さすが多数の賞に輝く作品といえるだろう。

posted by 灯台守 at 19:03| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年04月18日

月の影 影の海〈上・下〉十二国記 小野不由美

月の影 影の海〈上・下〉十二国記 小野不由美
久方ぶりに再読。出版元は講談社・ホワイトハート文庫から講談社文庫、その後新潮文庫へ。
版元は変わりつつも、イラストは山田章博さんが書き続けているのは有難い。

「月の影 影の海」は、十二国記の「十二国記が舞台の」最初の一冊。

中島陽子は普通の高校生。ある時、不思議な男が現れ彼女に言う。「お迎えに上がりました。」と。ケイキと名乗る彼が操る妖魔に乗り彼女は異界へ飛ぶが、別の妖魔に襲われる。かろうじて逃れた彼女は、見知らぬ世界をさまようことになる。彼女は何者なのか、元の世界に帰れるのか。

壮絶なストーリー展開である。上巻は、ほぼ逃走劇に終始する。妖魔に襲われ、食べ物もなく、巡り合う人にも騙される。リアルである。飢えた彼女の描写も、なかなか真に迫っている。だからこそ、後半のリアルさが増してくる。

今週末、読書会である。十二国記を愛する方々がどのようなとらえ方をしているのか、楽しみである。
posted by 灯台守 at 05:54| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年04月01日

たゆたえども沈まず 原田マハ

たゆたえども沈まず 原田マハ 幻冬舎
今年度の本屋大賞 候補作 10作目

1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。彼の名は、林忠正。その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すーー

といううたい文句の本。原田マサさんの絵画シリーズの三作目といえる。期待大で読み始めたが、なんかしっくりこなかった。そのまま最後までズルズルと続き終了。私自身がゴッホの絵があまり好きではないことが大きいのか、結末を知っているからなのか、(多分、双方の影響が・・・)

さすがに原田さんの筆の力は素晴らしく、読者を19世紀末のパリに連れて行ってくれる。ただ、読後感の寂しさはなんだろう。

さて、これにて10冊を読了。なかなか、大賞候補が難しい・・・
posted by 灯台守 at 09:57| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年02月20日

星の子 今村夏子

星の子 今村夏子・著 朝日新聞出版
本屋大賞候補作、6冊目で芥川賞候補作で第39回 野間文芸新人賞受賞作。

主人公・林ちひろは中学3年生。生まれた直後、いわゆる病弱だった彼女をどうにかしようと両親は、さまざまな事を試す。その中で、父の職場の同僚から「水」もらう。その水は効果てきめんだったことから、両親は怪しい宗教にのめりこんでいく。一方、両親から距離をとる姉。流されるちひろは、徐々に違和感を感じるが・・・

いわゆる新興宗教を背景に描くお話だが、ありがちな陰惨で不気味な感じはまったくしない。両親の強制感もさほど感じられず異質な感じもあまりしない。ただ、ちひろの周囲にいる人々が見え隠れしつつ彼女を支えていることが解る。結局のところ、彼女は両親の元を旅立つような暗示はあるが、でも完全に見放すようなことはしないだろうとも思えるエンディングである。姉はどうなったか、叔父さんの意図はどこにあるのか、書かれていない部分はあるが、癒され感が半端ないことは確か。

好きな人は好きだろうと思える一冊
posted by 灯台守 at 05:58| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年02月04日

騙し絵の牙 塩田 武士

騙し絵の牙 塩田 武士 KADOKAWA

本屋大賞候補作、5冊目。昨年は「罪の声」で大いに話題になった塩田さんの作品。大泉洋さんとのコラボ作品らしい。

速水は大手出版社に勤める編集者であり雑誌「トリニティ」の編集長である。出版界の苦境は例外なく彼担当のトリニティの売り上げにも現れていた。早期の黒字化を図らなければ廃刊になるとの危機感がある。その中で、同じ社の文芸月刊誌が廃刊になった・・・。非情な出版業界で戦う者たちを追う一冊。

まさに大泉洋とのコラボ作品。活字を追うごとに脳内では大泉洋主演の映画的に描写されていく。この作品が当たれば、映画化の時に彼以外の主役はいないとおもうくらいはまっている。(当たり前か)ストーリーも面白い。出版界の裏を知っている人も、知らない人も楽しめること請け合いである。(実態はこれより・・・以下自粛)

さらに、エピローグ以降も楽しませてくれる。一冊で三度おいしい「騙し絵の牙」。その意味は最後まで読むとわかります。
posted by 灯台守 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) |