2011年05月16日

なつかしく謎めいて

なつかしく謎めいて アーシュラ・K. ル=グウィン・著 河出書房新社・刊

原題は"Changing Planes" Planeには、飛行機のほかに「次元」という意味があり、この本の内容である「次元を旅する」という内容と、入り口が「飛行場の待合ロビー」という設定を掛けていることがわかる。翻訳者も苦労する題名であろう。

内容は、次元を旅するコツを得たアメリカ人らしい女性の旅行記の形を取っている。見知らぬ次元には、見知らぬ世界が広がっていて、私たち地球との比較を語ってくれる。

異なる次元には、玉蜀黍を遺伝子にもつ女性や、眠らぬ子供を作り上げた人たち、黙して語らぬ人々、夢を共有する人々、渡り鳥のように移動して生活する人々などを描く。私の中に一番残ったのは、人生をいくつも経験した記憶を持つ人々の話である。

グウィンの持つ独特の語り口で語られる話は、面白かったり、ちょっと怖い話であったりする。その異次元の話の中に、なぜか我々の「何か」を見てしまうのはなぜだろう。この本が書かれたのは、9.11以降とのことで、アメリカへの皮肉とも取れる箇所もある。でもそれ以上に、グウィン女史のしたたに人間を見つめる目が、この話を書かせたのだろうと思わせる。と、思ったとき、翻訳者と編集者が悩んだであろう邦題がしっくりくるのであった。「なつかしく謎めいて」。なかなか、意味深である。
posted by 灯台守 at 19:05| Comment(0) |
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