2016年08月23日

坂の上の図書館 池田ゆみる

「坂の上の図書館」池田ゆみる さ・え・ら書房
さ・え・らって「ここかしこ」っていう意味だと初めて知った次第。勉強はするものです。
ちなみにAmazonのリンクは下記。
Amazonで買うならここ

主人公は小学五年生の春菜。苦労のあげく自立支援センターで母と暮らすことになった彼女は、支援センター「あけぼの住宅」の横にある市民図書館で、初めて図書館に入った。そして初めて本を借りる。漢字も余り知らない春菜だったが、本を読む楽しさを知る。積極的に話し掛けてきてくれた佐久間さんや病弱な清水くんたちとの関わりの中で、本を読むことと出会った、そんな女の子のお話。

お話は春菜の視点で進んでいく。母子家庭の課題も背景に感じさせつつ、お話は進んでいく。なにより、その中心は図書館で出会った本達だ。やかまし村やエルマーのぼうけんというスタンダードが登場し、嬉しい限り。今の子供達にも受け入れてもらえるのだろうか・・・という疑問はあるが、名作の力を信じつつ読み進む。

物語のピークは、何と言っても作者自身と遭遇するところだろう。たぶん、著者の体験もあってだろうが、「司書になりたい」という春菜のまっすぐな答えが微笑ましい。

物語の中で、最後に春菜が読む本は、「あしながおじさん」である。誰の訳を読んだのだろう。図書館なので今は手に入らない谷川俊太郎・訳か?(実は、谷川さんの初翻訳は「あしながおじさん」)などと考えながら読み進むのも楽しい。

全体を通じて、春菜の成長を見守りつつ周りの子供達も変化していく姿が印象に残る。当初は自分の殻に閉じこもっていた彼女は周りの人たちや出会った本に支えられて一歩踏み出すことが出来たということだろう。

手慣れたというよりも、こつこつと書き上げられた印象を受ける本作は池田ゆみるさんの処女作とのこと。今後の活躍を期待したい。
posted by 灯台守 at 21:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 児童文学
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/176589930
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック