2018年06月20日

銀二貫 高田郁

銀二貫 高田郁 幻冬舎時代小説文庫
ドラマにもなった時代小説。高田節が心地よく、ページをめくるペースも早い。

大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す…。

悪人がほとんど出てこない代わりに火事は畳み掛けるようにやってくる。
大阪ではなく大坂表記なんですね〜〜
銀二貫がどれほどの価値があるか徐々に理解して行って最後の締めも二重三重に重ねるエピソードが素晴らしい。キャラクターにも工夫があって、全面に出て来る主人の和助や善治郎も良いが、脇の梅吉も最後に美味しい所を持って行く。泣かせる時代小説ここに有りという感じです。
posted by 灯台守 at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) |

2018年06月19日

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上・下 ピーター トライアス

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上・下 ピーター トライアス (ハヤカワ文庫SF)

第二次世界大戦に日本が勝っていたらどうなったか・・・というお話。いくつか、この設定の話はあるが、歴史上のイベント・事象を綿密に把握した上で書かれているのでリアリティはある。

途中の話は、かなグロい描写もあるので、誰にでも進められるものではないし、日本人の描写もかなりエグい。ここまでの天皇崇拝が実施されたかどうかは、わからないと思うが、外から見ればそういう形にみえたのだろう。
ずっと引っかかっていた小骨のようなモノが最後のエピソードで分かるという締めくくりは見事だと思う。残念ながら、人に進めるポイントはそこだけなのが残念。
posted by 灯台守 at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | SF

2018年06月16日

都市と都市 チャイナ・ミエヴィル

都市と都市 チャイナ・ミエヴィル ハヤカワSF文庫

読み終わって、主人公は「都市」かもしれないと思ったくらい、架空の都市「ベジェル」と「ウル・コーマ」の雑踏が、路地が、行き交う人々が見えるよな気がした。

欧州において、特殊な都市国家である「ベジェル」と「ウル・コーマ」。同一の場所にあり、お互いの領土がモザイク状に絡み合う2つの都市国家では、お互いを「見えて」いながら「見てはいけない」という文化が面々と継承されてきた不思議な場所だった。そんな「ベジェル」で一人の若い女子大生の遺体が発見される。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、二つの国の謎に迫っていく。

たぶん、この設定が無ければ、ただの警察小説である。警察小説としては、やや上くらいのレベルだが、その情景描写は摩訶不思議な世界が展開される。2010年代と思われる状況の中、ある事柄に対しては第二次世界大戦前後の暗い雰囲気が漂う。

秘密警察的な組織も見え隠れしたり、背後でうごめくモノがありそうだったり、最後まで物語は結末が見えない。まあ、エンディングは賛否両論あるだろうけど、私は気に入っている。

ストーリーだけではなく、この世界観を堪能する小説だろう。くしくも同時にヒューゴー賞を受賞したのが「ねじまき少女」という事が、読後に判明した時は運命を感じた。こういう事もあるんだよねぇ。
posted by 灯台守 at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | SF

2018年06月10日

恐怖の兜 ヴィクトル・ペレーヴィン

恐怖の兜 ヴィクトル・ペレーヴィン 角川書店 新・世界の神話

珍しいチャット形式の本。チャット形式なら「電車男」を思い浮かべるが、全く違うアプローチ。
いっそ、横書きの左へめくる方式の方がよかったかもしれない。

気が付いたらPCが設置された個室にいた8人の男女。掲示板のチャットルームで自分たちの情報交換をしつつ、謎を探る。何故ここにいるのか、何処にいるのか。どうもミノタウロスの迷宮を模していると気が付いた彼らは限られた情報の中から謎を解き明かしていくが。

ロシアの小説なのに、登城人物はハンドルネームだけなので、名前が変化せず、一個しかないので苦労せず読み進めるが、いやいや読みやすさに騙されてはいけない。読み飛ばした部分多し。

最後は、「そういう解決か」と思ったが、まあ有りかも。しかしテシウスは誰か、何故個々に集まった(集めらえた)かは明かされず・・・謎が残るが、自分で考えろということか。
posted by 灯台守 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2018年06月09日

このあと どうしちゃおう ヨシタケシンスケ

このあと どうしちゃおう ヨシタケシンスケ ブロンズ新社

このシリーズ面白い。というか、ヨシタケシンスケさん、面白い。

亡くなったおじいさんの残したノートを紹介するという内容だけど、「絵本でこの発想!?」という第一印象が強烈すぎる。

・こんなかみさまにいてほしい
・てんごくってきっとこんなところ
・いじわるなアイツはきっとこんなじごくへいく
等々、発想が豊かすぎる(まあ、過去の本も同パターンと言ってしまえば身もふたもないけど)

よくまあ、この題材にGO!を出した出版社に敬意を表しますねぇ。大英断というか、勇断というか。子供たちはどう感じるのだろうと思う。前半はおふざけもミックスしつつ、最後に向けての締め方は見事でしょう。

暗くならず、でも明るく楽しくが維持されているのはヨシタケシンスケさんでしょうか。
大人も子どもも楽しめる絵本!(というか、大人の方が楽しめるというのが本音かも)
posted by 灯台守 at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 児童文学

2018年06月07日

ねじまき少女 パオロ・バチガルピ

ねじまき少女 パオロ・バチガルピ ハヤカワSF文庫
上下巻のうち上巻は、ほぼ世界設定に費やしている。環境が崩壊したあとのタイが舞台。熱気と混沌の世界観が素晴らしい。交互に登場するキャラクタが見事に立ち上がってくる前半は後半への期待感を盛り上げてくれる。
前半最後は、重要キャラクターの戦いでクローズされ、見事に後半へ。

前半の最後から急激に展開が急になる。ねじまき少女・エミコは北にあるというねじまきの村に想いを馳せるが・・・

遺伝子組み換えの嵐の中で政治的な対立と人々の葛藤が交錯するし、キャラクターは個々に生きる戦いを繰り広げる。下巻の中盤から終盤は息もつかせぬ展開が畳みかける。謎は残るしヒッカカリの残る終わり方だった。ちょっと期待外れっぽいが、全編に展開される崩壊しつつあるが、たくましく生き続ける世界観は素晴らしい。それだけで読む価値あり。キャラクタは魅力的で個々の人物単位に物語が立ち上がってくる。特にカニヤの苦悩が引き立っていて好感が持てた。物語後のカニヤの活躍を祈る。
posted by 灯台守 at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | SF