2018年02月25日

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人

崩れる脳を抱きしめて 知念 実希人 実業之日本社
本屋大賞候補作8作目。知念さんの本は初。

広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。
外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を
通わせていく。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く――。
いたたまれず、病院に駆け付けた碓井は・・・

ユカリに付きまとう影、奇妙な遺言、不可思議な状況の裏にある事実とは。

甘い恋愛描写があって、気恥ずかしくなるが、そこが大きなトリックかもしれない。うかうかしていると知念さんのトリックにはまってしまう。最後の数十ページを読んでいると、「してやったり」の作者の顔が浮かぶようだ。

エンターテイメントは、こうあるべきという見本の一冊。
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盤上の向日葵 柚月 裕子

盤上の向日葵 柚月 裕子 中央公論新社
本屋大賞候補作 7冊目。残り少なくなってさみしい感じがたまらない。

埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。不可解なことに、一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。高額な将棋の駒を、なぜ一緒に埋めたのか・・。プロになれず、奨励会を去った佐野巡査と、県警捜査一課のベテラン刑事、石破は、手掛かりを求めて、駒の持ち主を探るが・・・

典型的な警察小説。現在の刑事二人の捜査状況ともう一人の主人公の「過去からの遍歴」を語りながら、主人公と二人の刑事の対面までのお話。将棋を知らなくても面白いが、知っているとさらに面白い。佐野巡査の苦悩もわかるし、石破の個性もあざやか。また、一方の主人公の人生もまた凄い。一気に引き込まれてしまう。

藤井聡太六段登場で活況を呈している将棋界だが、その裏側の「真剣師」を上手い取り上げ方で物語を作り上げている。真剣師といえば鬼団六氏が有名だが、こういう迫り方もあるかもしれない。幕切れがなんとも切なく哀しい。
posted by 灯台守 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ