2017年02月21日

みかづき 森絵都

みかづき 森絵都 集英社
本屋大賞候補作 8作目です。

昭和36年。高校も出ていない大島吾郎は小学校の用務員室で落ちこぼれの小学生の補習を行っていた。そんな吾郎を赤坂千明は塾の世界に引き込む。そして、二人は結婚。千明の連れ子、蕗子と二人の子、欄と菜々美とともに、高度成長する日本をバックに塾の世界へなだれ込んでいく。

吾郎と千明、そして千明の母の頼子、二人の子の蕗子、欄、菜々美、そして蕗子の子の一郎と杏の親子四代に渡る昭和から平成への年代記。根本に流れる「教育」への熱い想いがなんとも言えない。スゴイといえばスゴイが、うっとおしいといえば、うっとおしい。しかし、その畳み掛けるような事件の数々が面白すぎる。前半の千明と吾郎の奮闘ぶりも面白いが、後半の子どもたちの奮戦ぶりも捨てがたい。

折り重なる赤坂家と大島家に面々と続く教育との関わり。最後の吾郎と一郎の話も、ホントに面白い。

壮絶ではなるが、なぜか笑いがこみ上げてくる場面が多い。耐える話もあるが、弾けるエネルギーのある話でも有る。ぜひ画像化して欲しい作品だろう。
posted by 灯台守 at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) |

罪の声 塩田武士

罪の声 塩田武士 週刊文春
本屋大賞候補作 7冊目となりました。

昭和の未解決事件を追うことになった新聞の文化欄記者。その背景を探りに、わずかな噂を元にイギリスへ飛ぶが無駄足となる。しかし、昔の取材を掘り起こして、名古屋に向かい、とある事実に向かい合う。とあるオーダーメイドの洋服仕立て屋の男は、母親に言われ亡くなった父親の引き出しを開けることになり、とんでもないものを発見する。それは、一冊のノートと一本のカセットテープだった。そのテープには幼い頃の自分の声が入っていたが、その内容は信じられないモノだった。

三十年以上前の「グリコ森永事件」を想定し、登場する会社名・人物以外は、ほぼそのままというフィクションの形をとったセミノンフィクションとも言える。日本の食品業界を絶望の淵にまで追い込んだ「かい人21面相」の正体に迫り、納得できる目的をあぶり出す。また、その事件に巻き込まれた2つの家族を鮮やかに描き語り尽くす情景は、凄まじいものがある。

当時、大学生だった私には、他人事と思えない、一級品の犯罪小説である。
posted by 灯台守 at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) |