2017年01月25日

暗幕のゲルニカ 原田マハ

暗幕のゲルニカ 原田マハ 新潮社
本屋大賞候補作、二作目。
2001年9月11日 ユーヨーク近代美術館MoMAのキュレーター 瑤子は、通勤で地下鉄の出口から地上に出た瞬間、驚愕した。そこにはニューヨークの高層ビルが崩壊する様が展開していた。そして、それは最愛の夫、イーサンとの別れの情景となる・・・ その日から、彼女はピカソのゲルニカをニューヨークへ「奪還」する戦いを始めることになった・・・

かの名作、「楽園のカンヴァス」で見たことのある人も登場する本作は、原田マハさんのキュレーター経験をフルに活かした作品だろう。第二次世界大戦前夜のパリから始まり、パリ解放直後のピカソとゲルニカ作成過程を写真撮影したアダの話、現代の瑤子の話を交互に語りつつお話はクライマックスへなだれ込む。

ピカソはゲルニカに何を描いたのか、その願いはなんだったのか、現実と虚構を巧みに混ぜつつ私達の前にゲルニカを描き出す物語に胸打たれた。この分野では原田マハさんの右に出るものはない。独壇場だろう。
posted by 灯台守 at 20:51| Comment(0) | TrackBack(0) |

ツバキ文具店 小川糸

ツバキ文具店 小川糸 幻冬舎
恒例、本屋大賞候補作10作の連続読書の季節です。最初の一冊は、発表前に読んでいたこの本。

雨宮鳩子は、海外放浪生活を経て鎌倉に帰ってきた。先代=祖母の営んでいた代筆屋を継ぐために。文具屋を表の仕事として営みつつ、代筆屋として様々な依頼を受ける。絶縁状、借金のお断り、亡くなった父親に変わっての恋文等々・・・ 鎌倉の街並みに過ぎゆく季節とともに鳩子=ポッポちゃんは代筆屋として歩み始める。

大きな事件は起こらない。淡々と代筆仕事を受けて仕上げるポッポちゃん。少しづつ広がっていく周辺の人達との交流が、暖かで優しい。厳しかった先代の思い出を思い出しつつ、間に合わなかった自分を少しだけ攻めるポッポちゃん。そんな想いは自分の中だけにとどめ、受けた仕事に戸惑いながら進めていく。

事件も大きな転換も無いが、不思議に心あらわれていく。そして不思議な読後感を与えてくれる。裏のバーバラ婦人、昭和な男爵、あわてものみたいなパンティー先生。そして終りごろに登場するQPちゃんが可愛い。

周辺の人々が織りなすなかで、彼女が素直に立っているのが見えるような気がする。素敵な街、鎌倉を舞台に心がすっと落ち着く優しい物語だった。
posted by 灯台守 at 20:29| Comment(1) | TrackBack(0) |