2016年02月11日

王とサーカス 米澤穂信

王とサーカス 米澤穂信 東京創元社
太刀洗万智シリーズ第二弾。といっても私は第一弾を読んでいないがさほど問題は無かった。まあ、キャラクタの把握に時間がかかったが・・・。時は、2001年ネパールで発生した王家の複数王族殺害事件発生時に絞って、同時発生した殺人事件を追う話。

王家の事件発生時に偶然ネパールにいた太刀洗万智は、その背景を探ろうと取材を始めるが、その矢先に一人の遺体に遭遇する。なぜ、そこに死体はあったのか。なぜ、殺されたのか。そして・・・。

ジャーナリストの報道とはという永遠の課題を抱きつつ、今日もニュースは流れ続ける現代。ネパールで事件等遭遇し、取材活動を行う彼女。物語の最後に彼女が得たものは何だったのか。

ミステリとして評価すれば、作中のトリックは傑出しているは言えない。しかし、それを補って余りある事件の設定/環境はさすがである。ネパールの当時の緊迫した背景と現地の環境/文化が織りなす物語は、読者を引き込んで行く。まずまずの佳作だが、トリックの一部はそうそうに推察できたのでそれほど驚きは無かった。残念。
posted by 灯台守 at 16:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

羊と鋼の森 宮下奈都

羊と鋼の森 宮下奈都 文藝春秋
題名で戸惑うが、ピアノの調律師のお話。つまり、羊(フェルトのハンマー)と鋼(ピアノ線)出来た森(ピアノ線)のお話ということで。この人の作品は初めて。

主人公の外村は、高校時代、体育館に置いてあったグランドピアノの調律に来た板鳥の仕事に吸い込まれるように魅入られ、自ら調律の世界に飛び込むことになる。ピアノを熱心に弾いていたわけでもなく、音楽が三度の飯よりすきという訳でもないが、少しずつ調律師として立ち上がっていく。一癖あるが優しい先輩の柳、双子の女子高生の関わりつつ展開していく、彼の成長物語である。

これと言った山があるわけでもなく、絶対的な悪人も出てこない。私達と同じような職場で何かの戸惑いを抱えつつ人生を歩き始めた主人公が辿る物語と言える。ほんの少しだけ、励ましがあるか無いか、ちょっとした勇気が持てる言葉が必要な人にはおすすめする佳作。ただし、バリバリのエンターテイメントを求める方には不向き。良い本ではあるんだけどね。「単純な良い本」だけに読者を選ぶのかもしれない。

posted by 灯台守 at 16:25| Comment(0) | TrackBack(0) |