2015年06月24日

日の名残り カズオ・イシグロ

日の名残り カズオ・イシグロ ハヤカワepi文庫

すでに老境に達した執事。長年仕えた主人が亡くなった。その屋敷と共に次の主人に使えるが、新しい主人の不在に合わせてイギリス内の旅行に出る。前の主人・ダーリントン卿の思い出や、長年一緒に仕事をしてきたミス・ケントンとの関わりを語りつつ、車を走らせる。自らの人生を振り返りながら・・・

イギリスの執事といえば、それなりのイメージがある。私の基準はハビッシャムさんであるが・・・。(注:小公子に登場) 淡々と語るスティーブンスは、執事の理想、同じ職業だった父のこと、かつての主人・今の主人の話、同僚の話をとつとつと語る。
しかし、鈍感を絵に書いたような主人公ではある。主人の立ち位置は無視しているし、同僚の恋心には気がつかない。

しかし、気がついていないのかわざと語っていないのかは分からない。人生の終盤にさしかっかった彼の思いは何処にあるのか。執事としての人生を誇りに思いつつも、その中にある寂寥感にこみ上げるものがあるのは何だろうか。
posted by 灯台守 at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) |

2015年06月23日

福笑・喬太郎二人会 2015年6月22日(月) 繁昌亭

福笑・喬太郎二人会 2015年6月22日(月) 繁昌亭

先月の枝光さんとの二人会に続いて喬太郎さんと福笑さんという破壊力抜群の二人会。

寿限無 笑福亭たま
瀞満峡 笑福亭福笑
ハンバーグができるまで 柳家喬太郎
仲入り
擬宝珠 柳家喬太郎
裏切り同窓会 笑福亭福笑

さすがの東西爆笑王。ここには書けない魅力が爆発していました。
posted by 灯台守 at 21:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2015年06月22日

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 新潮文庫
2008年本屋大賞受賞作品。候補作の常連でありながら、なかなか大賞に届かなかった伊坂作品だが、この年にこの作品で受賞しました。
山本周五郎賞も受賞しているスリリング・エンターテイメントの傑作と言えるでしょう。

青柳雅春は、困惑していた。仙台にやってきた若き首相が暗殺され、その犯人が自分だと報道されている。直前にあった学生時代の友人、森田は「逃げろ」と言っていた・・・。
事件の直前の描写から始まり、事件の視聴者を描いた後、いきなり二十年後になる。つまり読者は、ほぼ事件の結果を知っているのだが肝心な犯人の全貌は分からない。その状態で事件本編へなだれ込む。

いきなり事件へ雪崩れ込むかとおもいきや、周りを固められてじわじわと周囲を狭められてから・・・というストーリー展開に唖然とする。さらに、身の覚えが無い濡れ衣を振りほどきながら逃げる主人公を描く手法は斬新であるし、その上、かれの学生時代と現代を交互に描きつつ、最後にさまざまなエピソードが収斂していく描写は素晴らしい。

小さな描写が重要な伏線になって繋がっていくのは、伊坂さんの得意とする所だが、それに説得力とリアリティを付加していく。なんとも言えないエンディングがぐっと来る豪華な一冊である。
posted by 灯台守 at 05:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2015年06月21日

柳家三三さん 独演会 "たびたびさんざ" in 西宮・酒蔵通り煉瓦館 2015/6/21

柳家三三さんの独演会を聴きに西宮・酒蔵通り煉瓦館へ。昼と夕 二回公演両方共聴いた。全6席全部違う話で堪能した。

お昼の回:
釜泥
唐茄子屋政談
仲入り
廿四孝

夕方の回:
道具屋
五目講釈
仲入り
死神

昼夜、二回公演で二回とも見た。六席とも全部違う話でまくらも違う。連続で良かった。
一度見てみたいと思っていた小三治さんの死神のサゲが聴けてとっても幸せ。

posted by 灯台守 at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 落語

2015年06月20日

読書会のレポート

2015年6月20日(土)に実施されたみんどく定例読書会での紹介本です。
同日実施された「本おや」の読書会用にチョイスした本だったりします。(^^;

灯台守が紹介したのは、写真の上段左から3冊め「夏への扉」、その斜め左下「サブリエル」です。
・「夏への扉」 R・A・ハインライン作・ハヤカワSF文庫、福島正実・訳
http://www.amazon.co.jp/dp/415011742X/
 押しも押されぬ名作SF&名訳SF。ロボット開発の技術者である主人公が信頼していた友人に裏切られ冷凍睡眠させられ目覚めた時は2000年。さて彼はどうなるのだろうか。
タイムトラベルもののSFですが、ストーリーで引っ張ってくれるので万人に受け入れられる名作でしょう。しかもネコのピートが重要なポジションにいるのでネコ好きにはたまらないです。

・サブリエル 他 古王国シリーズ ガース・ニクス・作 主婦の友社・刊
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529028/   サブリエル 上
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529192/   サブリエル 下
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529257/   ライラエル 上
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529311/   ライラエル 下
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529540/   アブホーセン 上
http://www.amazon.co.jp/dp/4072529486/   アブホーセン 下

「古王国シリーズ・全3部作」。サブリエルは、その一作め。現在のイギリスをイメージした所に隣接した魔法の王国は「壁」といわれるモノの向こう側にあった。そこでは時間も季節も違う独自の世界が展開されている。特に、そこではネクロマンサー=死霊使いが跋扈して悪烈な行為を行っていた。その死靈を浄化するのが「アブホーセン」と呼ばれるも魔術師だった。七種のハンドベルを使い、死靈を駆逐するアブホーセンの家系に生まれたサブリエルは、ある日アブホーセンである父の使い魔=死靈に出会う。父の危機を感じた彼女は、すぐさま探索の旅に出るが・・・

三部作で展開する話は、女性の頑張るファンタジーであり、猫と犬の精霊も登場し重要な役目を果たします。様々な伏線が集約する最終巻、そしてラスト100pはページを捲る手が止まらないでしょう。この十年でベスト3に入る傑作です。
posted by 灯台守 at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) |

2015年06月19日

月蝕島の魔物 田中芳樹

月蝕島の魔物 田中芳樹 東京創元社
遅筆の田中芳樹さんのヴィクトリア朝怪奇冒険譚、記念すべき最初の作品。
十九世紀の初頭、おりしもクリミア戦争がやっと集結した当時のお話から始まる。悲惨な戦争から命からがら帰還を果たしたエドモンド・ニーダムは、しっかり者の姪、メープルとともに大手の会員制貸本屋で働きはじめる。そして、大作家ディケンズと彼の家に居候している童話作家アンデルセンの対応を指示される。細君と微妙な関係であるディケンズ、自分の事も世話ができないアンデルセンにふりまわされるニーダム。そして、月蝕島(ルナ・イクリプス・アイランド)の沖で発見された、氷山に閉じこめられた謎の帆船を見に行くことになるが・・・

ショーロック・ホームズや切り裂きジャックのイメージで染まるヴィクトリア朝イギリスが田中さんは好きらしい。中でもディケンズはお気に入りとのこと。ヴィクトリア朝イギリスにかぎらず19世紀には冒険があったといえる時代でもある。その世界観の中での冒険活劇は、田中節満載で面白さ爆発でもある。
キャラクタも良い。中でも姪のメープルは飛び切りである。剣の腕はなかなかだが、今ひとつの叔父ニーダムを支えて七面六臂の活躍を見せてくれる。そして、ディケンズとアンデルセンという著名人を配して飽きさせないサービスぶりも楽しい。

ただし、田中さんの最大の欠点である「遅筆」は、このシリーズでも遺憾なく発揮され完結予定の3部は未だ執筆開始の声も聞かない・・・
posted by 灯台守 at 06:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2015年06月18日

オーデュポンの祈り 伊坂幸太郎

オーデュポンの祈り 伊坂幸太郎 新潮文庫

伊坂さんのデビュー作。
コンビニ強盗を行おうとして、見事に失敗した伊藤は、護送される間に脱走を図る。そして気がついたら不思議な島にいた。現代社会から隔離されながらも文明化されている”萩島”。そこは江戸時代から逆鎖国していた。
そこには変な住民が暮らしていて、逆のことばかり言う画家、島の法律のように人を射殺する男などがいた。中でも人の言葉をしゃべり未来を語る”かかし”までいた。伊藤が島に到着した次の日にそのかかしは殺される。かかしは、自分が殺されることを知っていたのか。

すべての原点があるといえるデビュー作。やはり伊坂さんらしいファンタジー・ミステリ。幾つかの謎が、少しづつ収束していく過程は、やっぱり素晴らしい。一見関連性の無い事柄が伏線としてエンディングになだれ込んでいく。最終的な謎の大きさは、今ひとつかも知れないがやはり一読の価値のある作品といえよう。
posted by 灯台守 at 05:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー