2014年08月23日

風に舞いあがるビニールシート 森絵都

風に舞いあがるビニールシート 森絵都 文春文庫

文章の上手い人とは思っていましたが、まさか森さんが直木賞を取るとは思っていませんでした。その受賞作がこの短篇集。

ある事に思いを注ぎ込む人の情熱と苦労を描く連絡です。
収録は以下の6編。
器を探して
犬の散歩
守護神
鐘の音
ジェネレーションX
風に舞いあがるビニールシート

たぶん、その時々に応じて一番の作品が変わるんだろうか。なかなか深い短篇集である。
posted by 灯台守 at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) |

2014年08月22日

メドゥサ、鏡をごらん 井上夢人

メドゥサ、鏡をごらん 井上夢人 講談社文庫
ミステリというよりも、ホラーかもしれない。

作家の藤井陽造は奇怪な状況で発見された。コンクリートで固められた箱のなかで裸体の状況で亡くなっていた。そして、コンクリートの中から発見された瓶のなかから「メドュサを見た」という不可解なメモを残していた。発見者の娘と婚約者は、彼が残したノートから遺作となる原稿があることを知る。しかし、どこにも見当たらない。原稿は何処へ消えたのか・・・

謎のレベルは高く、途中までの緊迫感は結構なレベル。途中からホラー色が強くなって最後は井上さんの色の濃いエンディングを迎える。ホラー好きならオススメ。ミステリを期待しないこと。
posted by 灯台守 at 06:43| Comment(0) | TrackBack(0) |

2014年08月21日

生首に聞いてみろ 法月綸太郎

生首に聞いてみろ 法月綸太郎 角川文庫
久方ぶりの法月作品だった。さすがの「このミス一位」。やっぱりミステリとしては傑作かも。

彫刻家・川島伊作が死期を悟って作り上げた石膏像。その密葬の前後で彫像の首が切り取られて無くなっていた・・・。盗んだのは誰か、その目的は。彫像をめぐる美術的な謎も絡み、法月は奔走する。

冒頭からの謎として「なぜ彫像の首を切り取って盗んだのか、その目的はなにか」という提示がある。そこに向かって、いくつもの複数の伏線が張り巡らされ見事に回収されていく。「驚愕の事実」は無いかもしれないが、パズルゲームの最後のピースを嵌めていくような感動がある。ミステリとしては傑作だが、物語としては少々弱いかもしれない。

なお、古くからの法月ファンとしてはお約束の父親の警視とのやりとりは、ちょっと懐かしい感覚があった。
posted by 灯台守 at 06:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリ

2014年08月08日

複製された男

「複製された男」はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。

歴史の大学講師をしているアダムは、同僚からすすめられた映画を見ているうちに、自分にそっくりな俳優が出演していることに気がつく。彼はその男を調べ、ついに合う。驚いたことに二人共に同じ日に生まれ、同じ傷を持っていた・・・。

導入から伏線が張りまくってある。一見意味のない描写の裏に重要な意味が。何も無駄なことはなく、そして最後へと雪崩れ込んでいく。サスペンスかミステリかSFか?

解釈は見た人の数だけある映画でしょう。
posted by 灯台守 at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画

2014年08月07日

魔法使いの心友 香魚子x柚木麻子

魔法使いの心友 香魚子[画] 柚木麻子[原作] 別マコミックス (集英社)

柚木麻子さん原作ということで。

楠そよはケーキ屋さんの娘。彼女はクラスでも普通に振舞うことを気に掛けている。目立てば周りからなんと言われるか、解らないから。そう空気を読んで自分を抑えていた。そんなクラスへ魔美坂リサが転校してくる。彼女の正体は魔法使い。魔界の危機を救うために人間界に追放された魔界のプリンセスを探し、彼女の「心の花:ロータス」を魔界に持ち帰ろうとしていた・・・

まあ、いわゆる魔女っ子ものの王道でしょう。ダブルヒロインの主人公は魔女のリサと普通の女の子のそよ。さて、題名のように心友になれるでしょうか・・・という点が話の中心になります。柚木麻子さん原作とはいえ、バックボーンは、それなりですが画のうまい香魚子さんと、柚木麻子のお話がうまく絡みます。いけ好かない男の子が大変身するのはご愛嬌ですが、2巻で終了という早期打ち切りでは仕方ないでしょう。

「ストーリーのふくらみ」というところまで原作者を生かしきれなかった・・・というか待てなかった編集には、「残念!」という評価を送っておきます。
posted by 灯台守 at 06:15| Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ

2014年08月06日

まるまるの毬 西條奈加

まるまるの毬 西條奈加  講談社
西條さんの最新刊。江戸のお菓子屋を巡るお話。
「南星屋」は江戸・麹町にあるお菓子屋。主は、とある事情で町人となった旗本の次男坊である治兵衛。京をはじめ各地を修行で歩いた主が日替わりで出す全国の菓子を求める人が今日も列を作る。娘のお永と孫のお君と三人で暮らすこの一家にはひとつの秘密があった・・・

西洋のそれとは違う、四季を映した和菓子をネタにしつつ、治兵衛一家をゆったりと語る短編集ではある。しかし、後半、一転して荒波が彼らを襲う。でも、彼らを救ったのは、やっぱり和菓子だった。

題名をすんなり読める方は珍しいかもしれない。毬(いが)と読むとは知らなかったが、表題の「まるまるの毬(いが)」というのは、名題といえる。こんなところにも本作の魅力が現れている。

この後も彼らの消息を知りたくなる魅力的な時代・和菓子小説だった。
posted by 灯台守 at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代物

2014年08月05日

わたしにふさわしいホテル 柚木麻子

わたしにふさわしいホテル 柚木麻子 扶桑社
もう抱腹絶倒の文壇裏話、成り上がり?作家の実録本?

中島加代子は、某社の新人文芸賞に応募し見事に大賞を受賞した。しかし、アイドルが同時受賞し、話題はさらわれるわ、作品の出版は無期限延期になるわ惨憺たるデビューとなる。そんな彼女は鬱憤を晴らすべく、山の上ホテルに宿泊し文豪を気取り妄想の世界に浸る。そこへ彼女の大学時代のサークルの先輩で有名出版社の編集者・遠藤がシャンパンを差し入れに来るが・・・

文壇の重鎮を手玉にあやつり、編集者の本音を逆手にとって出版業界を駆け上る加代子の妄想と虚実入り混じったバイタリティあふれる活躍を描く。

本当かウソか、判断に迷う(そんなことはないが)傑作な活劇を展開する本書は、作家・柚木さんの妄想・・・と、すずらん本屋堂でご本人がおっしゃっていた。いやはや傑作なその行動力がすばらしい。短編で構成される本書を読み進めながら、「次はどんな手で?」と楽しみつつ読み進んだ。まさに「加代子オンステージ」を堪能することが出来る。

作家とは因果な商売やなぁ・・・と思いつつ、次の作品を期待して待ちながら、期待はずれに終わるとこき下ろす読者も厄介なヤツである。
posted by 灯台守 at 07:08| Comment(0) | TrackBack(0) |