2012年08月15日

密封 上田秀人

密封 〜奥右筆秘帳〜 上田秀人 講談社文庫
時は、十一代将軍・家斉のころ。幕府の役職に、奥右筆というものがあった。いわゆる書記であるが、すべての指示、嘆願書、提案、もろもろの事項、書類決裁がここを流れる。この役職の機嫌をそこねれば、老中ですらやっかいという役職。おまけにすべての情報がここを中心に流れていくため、ある種の権力を握っていた。今も昔も情報を握ることは重要らしい。

立花併右衛門は、奥右筆組頭。とある大名の死亡届と末期養子の願いを見て、ふと疑問を抱く。その帰宅の途中、怪しい者から「深入りするな」という脅しを受ける。彼は、隣家の次男坊、柊衛悟を護衛につけるが・・・

不可思議な発端から、現将軍とその生い立ち、将軍に就けなかった者の謎の死、出世のため暗躍する者たち、その背後で操る黒幕・・・とネタは尽きない。また、主人公の立花併右衛門は、剣の達人でもなく、処世術に長けた文人として描かれ、柊衛悟も腕は立つが、まだまだ修行途中の剣士として登場する。この二人の掛け合いもある種の緊張感と上下関係がきっちりと踏まえられた会話が進行し、気持ちが良かった。また、立花の娘・瑞紀と柊との関係も良い。

本作は、シリーズの一巻目であるが、さすが「この時代劇シリーズがすごい」の一位を取ったことのあるシリーズの冒頭を飾るにはふさわしい出来だと思う。

posted by 灯台守 at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 時代物