2012年06月16日

マーセデス・ラッキーのヴァルデマール年代記

マーセデス・ラッキーの作品をこれから読もうとする方へ

彼女の公式WEBを覗くと、「ドイツ製の車」の話がいきなり登場する。著書には「マーセデス・ラッキー」となっているが、この苗字は「メルセデス」と言ったほうが、日本人には解りやすい。メルセデス・ベンツを検索してたどり着く人が多いに違いない。

私が非常に幸運だったのは、最初に遭遇した作品が「女神の誓い」だったということ。著者自身も、一連の話がヴァルデマール年代記になると思っていたかどうかわからないが、主人公の二人が非常に魅力的であったことはたしかである。いわゆる「剣と魔法」のファンタジーだが、剣も魔法も、その描写はかなりリアリティがあり、便利に使いこなせるスーパーヒロインという設定ではない。実際、彼女たちは疲れもするし愚痴も言うし歳もとる。生理現象に悪態もつく。「正義だけでは食っていけない」という主張もあるし、魔法の剣である<もとめ>を罵倒することもある。ファンタジーによくあるご都合主義のみで構成されているのとは違うリアリティが充満しているのである。

また、一冊目の「女神の誓い」が長編でありながら、短い話の集合体であること、二冊目の「裁きの門」が長編であることが、ヴァルデマールの世界観理解のハードルを下げている。この年代記の中心であるヴァルデマールから始まるのではなく、平原のタレ=セイドゥリン一族虐殺から始まる手法はすばらしい。

続く「誓いのとき」は純粋な短編集であり、続編的な「運命の剣」がケスリーの孫のケロウィンが主役の長編であることで、その世界が徐々にわかっている様は、感動的でさえある。ここまでくれば(読めば?)ハマルこと請け合い。

出版社が2社に分かれていてイラストが違っていたり、三部作でひとつの塊であるが、出版ペースが若干違うことなど、残念な部分もある。でも、着実に著作は出ているので当分楽しめそう。オススメのシリーズに間違いない。
posted by 灯台守 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー