2012年01月11日

ピアスの星 赤羽じゅんこ

ピアスの星 赤羽じゅんこ くもん出版
「ももたろう」の同人、赤羽じゅんこさんの作品。久方ぶりの高学年もの。

ハミは六年生。コンビニのバイト定員"ミントくん"にあこがれているが、将来の夢はわからない。幼な友達のサヤは、今は学校に出てきていない。ハミは学校からプリントを持ってサヤの家にいくが、サヤの気持ちは良くわからない。そんなとき、ハミとサヤは変わらない今から一歩踏み出すため、ハミは"ミントくん"に「声をかける」、サヤは「遠足に参加する」という約束をするが・・・

淡々と流れる日々は、大人も子供も変わらない。その中で、「夢をもて」と大人は言うが子供たちはそう簡単に夢を描けるわけではない。ハミは、多少世渡りが上手い小学生で、サヤは少々融通が利かない女の子というだけかもしれない。人には、その人だけにしか解らない悩みがあり、希望があり、夢もある。結局はその人オリジナルなものさしで計るしか、無いのだ。小学六年生のハミとサヤは、お互いにそのものさしを探していた時期だったに違いない。

不登校の話を読むたびに思うことは、「何故親や先生は、学校に行くことを絶対とおもうのか?」ということだ。その理由をキチンと説明した話は、見たことがない。突き詰めれば、「なぜ学校で勉強するのか?」ということだ。この「ピアスの星」には、その答えが書かれている気がする。たぶん、この本を必要とする女の子が、日本のどこかにいるに違いない。泣き濡れて眠る、その子の枕元においてきてあげたい気がする。

赤羽じゅんこさんは、決してスラスラ書き上げる作家のタイプではないと思う。デビュー作の「おとなりは魔女」もそうだったように、作者と主人公が、物語の中と書き手に分かれつつも、一心同体となって織り上げられる物語を編むタイプである。だからこそ、胸打つストーリーとなって輝く「ピアス」を見せてくれる。
posted by 灯台守 at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 児童文学

2012年01月10日

墨攻 酒見 賢一

墨攻 酒見賢一 新潮文庫

「後宮小説」の酒見賢一の作品。マンガの原作でもあり、映画の原作にもなったそうだ。

墨家の軍師の指揮の下、2万の軍勢の猛攻に耐え切り、半年以上にわたり弱小城を守る話。

文庫一冊だが、長編というよりも中編と言ったほうが良い長さ。その中に、墨家の思想とその思想を支える一人の軍師の想いを語りきっているところが読みどころ。あっという間に読みきれる長さではあるが、内容は濃いものがある。場内の人々の士気を高め、長期にわたる篭城も想定された攻撃に対して着々と準備する様は、圧巻である。

最後の結末はあっけないが、それもまた史実として受け止めることが出来ることも、酒見賢一ならではかもしれない。中島敦記念賞を本作で受賞しているが、この賞は中島敦没後50年を記念して作られたもので継続していないとのこと。つまり、酒見賢一しか受賞していない賞である。これまた粋である。
posted by 灯台守 at 20:36| Comment(0) | TrackBack(0) |

2012年01月09日

童夢 大友克洋

童夢 大友克洋 双葉社 アクションコミックス。
いわゆるA5サイズの大判で出ている。日本人というかアジア人というか、あの独特な人物描写は彼以前は無かったし、今も追従できている人はいないような。

とある団地。その団地で刑事部の部長が自殺する。その自殺を契機に不可思議なことが連続で起こる。そして、その事象は・・・

濃密な短編SFを、忠実にマンガ化したような作品。文章ではなく、マンガの持つ特異性をフルに発揮し、大友克洋の名を世に知らし召した作品でもある。その「センス オブ ワンダー」の世界観に触れて、一時期 彼の作品を軒並み読んでAKIRAの刊行を心待ちにしていた時もあった。しかし、童夢のような作品とは二度と出会えなかったし、書いてくれてはいない。

あの一冊に詰まった異世界。平凡な団地の空間に、すべてのエネルギーを注ぎこんで作り上げた「童夢」は、一種異様なマンガだった。だからこそ、「マンガのSFも有りかも」と納得させてくれたし、期待も持たせてくれた。SF大賞も受賞した。でも、今では新刊で購入できないのは残念。某○○offにて105円で購入。データ化されてiPadに格納済み。
posted by 灯台守 at 21:25| Comment(2) | TrackBack(0) | マンガ

2012年01月08日

自炊すすめる。

本の裁断と自炊をすすめる。なかなか大変。コーチングの本、3冊とマンガを数冊実施。マンガはグレースケールで取り込んだほうが綺麗になる。

取り込んだ後、ちゃんと適正化すると読みやすい。ひと手間かけるのは、料理もこれも同じこと。エディングスの4部作の全部の適正化を終了。
posted by 灯台守 at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) |

2012年01月07日

世界音痴 穂村弘

世界音痴 穂村弘 小学館文庫
最近気になっている歌人の穂村弘さんの本。エッセイである。裏の紹介には「独身・三十九歳・ひとりっこ・親と同居・総務課長代理」とある。ネットの情報によれば、今は結婚していらっしゃるらしいので、独身ではなさそうだ。

このエッセイも、常人では考えられないような視点で語られる。たとえば「点」。ある日、若い女性が書き物をしていて、行の最後まで来たときやおら行頭にあった「大」の字に点をうったそうだ。つまり行頭の字は「大」ではなく「犬」だったらしい・・・。そして彼は考える。「なぜ、行末まで来て行頭に帰って、点をうったのだろう??」と。

他にも多数、摩訶不思議な主義主張が語られている。でも、政治にも人生の哲学的な深みにも「あまり」関係の無いところで悩んでいるのは「本当は違うんだ日記」と同様ではある。回転寿司の話から、突然のベストテンにいたるまで、まあその支離滅裂な感じは彼の短歌から受ける印象と微妙にすりあっていて納得してしまう。

でも、不思議に気になる歌人である。
posted by 灯台守 at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) |

2012年01月06日

予言の守護者 デイヴィッド・エディングス

ベルガリアードT 予言の守護者 デイヴィッド・エディングス は、ハヤカワ・ファンタジー文庫である。アメリカ人が好きそうな勧善懲悪で、コメディタッチなところはハリウッド映画のようでもある。でも面白い。

今回、自炊したので確認を含めて再読開始した。筋は知っているし、もう何回も読んでいるのでスラスラ進む。さらに良いことは、何度も読みすぎてバラバラになりかけていた文庫本の状態をまったく気にしなくても良くなったこと。自炊効果さまさまである。

電子書籍だったら、持ち運びも楽である。これで文字の大きさを変更できたら最高だけど、現状は仕方なし。
posted by 灯台守 at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2012年01月05日

自由軌道 ロイス・マクマスター・ビジョルド

自由軌道 ロイス・マクマスター・ビジョルド 創元SF文庫
ネビュラ賞受賞作だけあって、読者のページをめくる手を休ませてくれないSF。

遺伝子操作が発達し、人工子宮が完備された世界。植民地惑星で、人工衛星上のエリアで働く遺伝子操作によるミュータント達。彼らには足が無く、その代わりに手がある。四本の手の持ち主、クァディーと呼ばれる彼らは重力の無いところで働きやすいように作り出された。やっと彼らが組織として活躍する直前、人工重力装置が発明され、彼らの重要性は下落した。その結果、彼らを処分することになった。そのことを知った溶接技術者のレイは、彼らと共に反乱を起こすことを決意する・・・。

溶接教師として、クァディーたちを教える教師役のレイ・グラフが主人公。彼が、クァディーたちの処分=抹殺するという予測される会社の動きに対して義憤を感じ、反乱を起こす過程が大筋ではあるが、単調な話の中に、トラブルや軋轢が生じる中、レイは冷静かつ論理的に解決していく。その姿は、まさにヒーローである。でも40過ぎのオジサン的発言もあったり、自信喪失する場面も出てくる。なかなかリアル。
ミュータントであるクァディーたちの描写もなかなかすばらしい。彼らのユーモラスな部分や、相互援助している様子も描写されている。無重力状態での行動等は、科学的考証もされているようだ。

物語の中盤で、反乱を起こすことを決意してからは、流れるような展開でノンストップ・ストーリー。ページをめくる速度はあがるだろう。ストーリーテリングを堪能しつつ、未知の空間でを堪能できるSFである。

posted by 灯台守 at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) |