2011年12月04日

オーケストラ!

オーケストラ!はラデュ・ミヘイレアニュ監督のフランス映画。当然だが、アメリカ映画とは違う雰囲気で映画館で見てよかったと思う映画だった。

本作は、松山映画祭という企画で上映されたうちの1本。

主人公はボリショイ・オーケストラの清掃員。30年前、ある事情のため演奏を中止された天才と呼ばれた指揮者でもある。ふとしたことから手に入れたパリ公演の依頼FAXをこっそりいただいた彼は、自ら昔の仲間を集め似非ボリショイ・オーケストラを作ってパリ公演をするという企画を実行しようとする・・・

共産党が崩壊した現代を背景にこの映画は描かれる。映し出されるロシアは生活感にあふれているが生活は苦しい。その状況の中、清掃員として働く元天才指揮者は、未だに指揮者への執着を捨てきれない。嫁と子供がイスラエルにいる元チェロ奏者は現救急車運転手だし、彼が指揮者をやめる原因を作った元共産党中核メンバーで共産党復活を夢見る元KGPメンバーは街頭演説で、共産党の復権を叫ぶ。その街頭演説のサクラを集めることを有料で請け負うには、元天才指揮者の嫁だったりする。彼らを中心に、実際には実現しそうに無いパリ公演の入れ替わり企画が進められる。そして、この天才指揮者は、なぜかチャイコフスキーのヴヴァイオリン協奏曲に執着し、そのソリストに若手の女性ヴァイオリニストを指定する。

ロシアの情勢を背景に、コミカルに現在の状況、パリへのにわかオーケストラの団員の移動/現地ドタバタを画きつつ、悲壮な30年前の出来事を淡々と語る。30年前ということで、ブレジネフなどという記憶にある名前が出てくる。そんなに昔でないころ、この物語の背景となることが起こっていたことを改めて考えさせられる。それぞれの人生が垣間見える画き方は、映画そのもの感がある。パリの劇場の状況と、元指揮者の復活への願望と恐れ、抱える想い、若手ソリストが抱える悩みなどが最後のチャイコフスキーの協奏曲に集約されていく。その感情が音楽に乗ってスタンディング・オベーションへとなだれ込む。

音楽の力強いエネルギーを吹き込んでくれるような映画だった。
posted by 灯台守 at 07:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画